学部・研究科・附属病院の歴史

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芸術工学部・芸術工学研究科

芸術工学部・芸術工学研究科の歴史

芸術工学部設立準備委員会の活動(1994年10月〜1996年3月)

 芸術工学部設立準備委員会は、平成6年(1994)10月27日から平成8年(1996)3月19日までに、計22回開催され、学部発足に必要な事項、文部省設置認可に必要な諸事項を審議した。委員は、柳澤忠準備委員長のほか、宮村篤典、稲垣勝彦、嶋田勝彦(共に名古屋市立女子短期大学)、山本眞輔、山下亨子、丹羽伸二(共に名古屋市立保育短期大学)、山本正康(名古屋市立大学教養部)で、第2回からは拡大会議として、瀬口哲夫(豊橋技術科学大学)、清水裕之、鈴木賢一(共に名古屋大学工学部)、林英光(愛知県立芸術大学)が助言者として参加した。瀬口は第8回から委員となり、第10回からは吉村ミツ、森島絃史、山口良臣、廣川美子、奥山健二、川崎和男が委員として参加し、徐々に設立時の顔ぶれが揃っていった。
 委員会の開催日と議題は表1の通りで、おおむね月に1度開催されたことがわかる。議題は学部の理念やカリキュラム、施設整備にはじまり、常勤/非常勤の教員選考、教員組織、入学試験などに広がり、研究費や予算、教務関連事項、嘱託職員など、設立までの時間が近づくにつれ、現在の教授会で議論されるような詳細に及んだ。
 ここで触れておくべきは芸術工学部の理念で、委員会では「芸術工学とは何か」について議論が重ねられた。瀬口の述懐によれば、当初は神戸芸術工科大学を参考にしていたが、委員長の柳澤は芸術工学をバウハウス的なものとしてイメージしていたようで「総合デザイン」という言葉をよく使っていた。一方、宮村委員は芸術工学の基礎に建築をおいており、2つ設置された学科のうち、生活環境デザイン学科の構想が宮村委員の方で具体化された。
なお、当時全国の大学で芸術工学部が設置されていたのは、昭和43年(1968)開学の国立九州芸術工科大学(平成15年(2003)に九州大学に統合され芸術工学部となる)と平成元年(1989)開学の私立神戸芸術工科大学の2校で、いずれも芸術工学部による単科大学であった。また、バウハウスは大正13年(1919)にドイツのワイマールで設立され、昭和8年(1933)に閉校した建築や絵画、彫刻、写真など造形全般にわたる総合教育機関で、大正13年(1924)、デッサウに移転した際に建設されたの校舎と教員住宅群はユネスコ世界文化遺産に登録されている。

図2 芸術工学部の概念図(創立10周年記念誌)
図2 芸術工学部の概念図(創立10周年記念誌)

 委員会では日本の急激な経済成長と技術の進歩の一方で、「離れがちであった芸術(アート)と工学技術の融合を生活という視点から見直す必要がある」と考えた結果、芸術工学部の理念は「芸術と工学の融合」となった。そして「感性」、「技術力」、「人間理解」を3本柱に「人間社会についての広い視野と、豊かな感性と高度な科学技術に関する知識を持ち、価値観の多様化した社会において貢献できる設計家(総合デザイナー)を育成する」ことが教育目標になった(図2)。また、教育目標を実現するため、「ものづくり」を中心とした生活環境デザイン学科と「ことづくり」を中心とした視覚情報デザイン学科の配置することとした。『設置認可申請書』によれば、生活環境デザイン学科は「個人的居住空間や生活に密着した公共的空間において人間と生活環境を相互関連させてとらえ、人間にやさしい環境のデザイン」、視覚デザイン学科は「画像、映像メディアと情報工学の選炭諸技術を活用したデザイン」の教育を行ない、両者が有機的につながることを目指した。
 芸術工学部の理念は、英語名称にも込められており、柳澤によれば、九州芸術工科大学や神戸芸術工科大学は「School of Design」であるのに対し、芸術工学部では「School of Design and Architecture」と“Architecture”が付されている。これは、建築だけでなくコンピュータも含めた広い意味のArchitectureであるという。この時代には、コンピュータが一般家庭に普及し、図面のCAD化、CG技術の普及が進みつつあったから、そうした空気も反映したのであろう。
 文部省へは平成7年(1995)4月28日に芸術工学部の設置を申請し、12月22日に認可された。市立大学としては、昭和39年(1964)の経済学部以来、32年ぶりに設置された新学部のひとつであった。そして、翌年2月と3月に入学試験が実施されたが、特徴は数学と理科に加えて実技が課されていたことであった。

図2 芸術工学部の概念図(創立10周年記念誌)
図2 芸術工学部の概念図(創立10周年記念誌)

表1 芸術工学部設立準備委員会委員会の議題

回数 開催日 議題など
  1993.4 名古屋市が「大学設立準備室」を設置
  1993.7 大学設立準備室と2つの市立短期大学が「統合・四年制大学準備検討委員会」を設置
  1993.9 2つの市立短期大学に名古屋市立大学教養部も含めて「人文社会学部」として統合することが合意(11月、名古屋市立大学評議会において了承)
  1993.10 「市立三大学の統合に関する整備委員会」が設置
第1回 1994.10.27 [経過報告]芸術工学部設立準備委員会の設置の経緯、芸術工学部設立準備委員会専門部会設置、大学の整備計画
第2回 1994.11.18 [拡大会議]学部の理念について、カリキュラムについて、施設について、芸術工学部設立準備委員会専門部会のスタッフについて
第3回 199.12.1 学部の理念について、カリキュラムについて、入学試驗について
第4回 199.1.14  
第5回 1995.1.11  
第6回 1995.1.27  
第7回 1995.2.13 教員選考について:都市景観論担当者など7名の採用が決定
第8回 1995.3.8 教員選考について(ビジュアルデザイン概論担当者など5名の採用が決定)、教育課程について、入学試験について、短大教員の新学部移行計画について
第9回 1995.3.24 教員選考について(環境工学担当者など2名の採用が決定)
第10回 1995.3.30 非常勤講師の選考について、教員組織について
第11回 1995.4.12 文部省設置認可申請書類について、教員組織について、教員採用計画等について、入学試験について
  1995.4.28 文部省に設置申請書を提出
第12回 1995.5.24 教員採用年次の変更について、入学試験について、学則について、海外派遣・外国人客員研究員の招へいについて、公開講座について
第13回 1995.6.12 入学試験について、施設計画について、備品・機器類について、図書等の整備について
第14回 1995.7.19 追加提出書類について、研究費について、学生実習費について
第15回 1995.8.24 助手について、総合デザイン研究施設(仮称)について、予算要求について、入学試験について
第16回 1995.9.14 総合デザイン研究施設(仮称)について、嘱託員について、履修規定等について、入学試験について、建築士申請について
第17回 1995.10.9 補正申請提出書類について、教務関係事項について、入学試験について、平成7年度購入備品・機器について
第18回 1995.11.13 予算要求の状況について、研究費の配分について、学部の運営等について、教務関係事項について、入学試験についいぇ、補正申請提出書類について、デザイン棟について
第19回 1995.12.15 嘱託員について、学部長選考規定について、学部運営等について、教務関係事項について、入学試験について、部局長会・学部長会議題について、学長選考のあり方について
  1995.12.22 芸術工学部設置認可
第20回 1996.1.18 評議員等について、教務関係事項について、入学試験について、部局長会議題について、学長選考のあり方について
第21回 1996.2.20 平成8年度予算について、研究員規定について、教務関係事項について、入学試験について、各種委員会委員について
第22回 1996.3.19 一般選抜の合格者について、各種委員会委員について、部局長会議題について

表注:『名古屋市立大学 芸術工学部 芸術工学研究科 創立10周年記念誌』の掲載情報を調製