祝辞・挨拶

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研究科長・病院長挨拶

医学部・医学研究科

医学研究科長
道川 誠

 名古屋市立大学は、令和2年(2020)10月に創立70周年を迎えました。また、医学部は創設77周年を迎えました。これまで、5,000名に迫る卒業生(医師)を輩出し、その多くは愛知県・中部地区の医療を担って活躍しております。本学医学部の発展を支え、暖かなご支援をいただいております名古屋市ならびに名古屋市民の皆様、発展の主体者として医学部・医学研究科の医療、研究、教育を担い、牽引いただいております多くの卒業生、同窓会ならびに教員の皆様に厚く御礼申し上げます。
 本年は、新型コロナウイルスの世界的蔓延(パンデミック)が起きた年として長く記憶されることになると思います。歴史が示すように、人類は、感染症蔓延の脅威に幾度も直面し、乗り越えるたびに社会のパラダイム変換を起こしてきました。今回のポストコロナの時代では、社会の諸制度や活動様式の変革が一気に進む可能性が指摘されています。また、世界では今、資本集約型から知識集約型社会への大転換が起こっており、「知」が圧倒的な競争力の源泉になる時代が到来しています。医学部・医学研究科もこうした変化に適切に対応し、発展し続ける必要があります。
 一方、医療や教育は、3密(密閉、密集、密接)を基本様態とするものであり、研究を含めて労働集約性の高い、言い換えれば効率の悪い分野でもあります。こうした分野では、そこで働く人の質・量が業績を決定づけることがわかっています。したがってAIや新しいテクノロジーを駆使した変革を積極的に行った上でなお、さらなる人材力の向上と人材の糾合が重要であるのは論を待ちません。優秀な人材を採用、育成、定着させられる仕組みを安定的に稼働させられるかどうか、そこに医学部・医学研究科の命運がかかっているのです。
 名古屋市立大学医学部・医学研究科は、名市大を担って立つ人材の獲得・拡大への新たな仕組みを整備すべく改革を続けてきました。力ある臨床医、研究医の排出を目指した「入試改革および医学教育改革」です。卒後教育ならびに高度医療を担う医師の質・量の向上にむけた「市立東部・西部医療センターの大学病院化」であり、蒲郡市民、豊川市民病院との連携強化であります。さらに、がん診療・包括ケアセンターなど各種センターの設置であり、東南海地震等の災害から市民を守る災害拠点「救急・災害センター」の建設です。研究面では、増加の一途をたどる認知症・精神疾患や発達障害研究拠点である「脳神経科学研究所」の設置ならびに研究力の向上を図る共同研究施設の充実があります。こうした改革の流れの中から次代を担う力強き医師の人材群が、陸続と輩出されることを期待します。

 この記念誌に第一期生である青山光子先生の手記「名市大のルーツ」が転載されています。本学は昭和18年(1943)、戦禍の中で開学、日常的に空襲を受ける中においても、授業や実習を決してやめなかった気骨ある抵抗の精神と、学生・教員の凛とした向学の姿が描かれています。歴史に刻まれた名市大の原点とそれに続く伝統を忘れてはならない、私はそう思います。パンデミックのあった令和2年(2020)を契機に医学部・医学研究科は大きく発展したな、そう同門会、同窓会の皆様から誇りを持って思っていただけるよう、創立80周年を目指して皆様と共々に成長・発展への歩みを強く進めてまいりたいと思います。