学長挨拶

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学長挨拶

開学70周年を迎え、名市大の明るい未来を切り拓く

名古屋市立大学 理事長・学長
郡 健二郎

名古屋市立大学 理事長・学長
郡 健二郎

 開学70周年の記念行事は式典をはじめ多くが延期となりました。来年には、関係者が一堂に会せることを心より願っています。この1年間を「70周年Year」として前向きに捉え、このような時期にも事業を積極的に展開し、名市大の明るい未来を切り拓くことに繋げたいと存じます。


1. 苦節の時を経て、名市大の基礎を築かれた先達に深い感謝

 わが国では、昭和22年(1947)制定の学校教育法により、旧制大学や旧制専門学校などは新制大学に再編されました。名市大は、明治17年(1884)設立の名古屋薬学校と昭和18年(1943)設立の名古屋市立女子高等医学専門学校を源流として、薬学部と医学部の2学部からなる大学として昭和25年(1950)に誕生しました。その後、経済学部、人文社会学部、芸術工学部、看護学部、理学部が開設され、現在では7学部7研究科からなる総合大学に発展を遂げています。
  この間、約28,000名の学部卒業生と約8,000名の大学院修了・論文博士取得者が名市大から巣立ち、社会で活躍しておられます。大学においても近年の飛躍は著しく、国連のSDGsの第3部門(医療と健康)では世界16位・全国1位に、社会貢献度(日経新聞社調査)では全国5位・公立大学1位に評価されました。さらに文部科学省の科学研究費獲得件数は公立大学1位になるなど、昨今の教職員の活躍には眼を見張るものがあります。
 公立大学は、設置団体(名古屋市)、文科省、厚労省、総務省の4機関から管轄され、それを「4人の母がいる」と、私は称しています。このことにより、公立大学は、国立・私立大学にはない特徴がある反面、意思決定が遅れがちになり、経済的支援が少なく、中央からの情報が乏しいなどのハンディを抱えています。現在より一層厳しい環境にあった先達は、苦節の時代を経て、名市大の基礎を築かれました。私たちは、そのことに深く感謝し、名市大をさらに発展させる思いを新たにしております。



2. 名市大の明るい未来を切り拓く担い手に期待とエール


 大学を取り巻く環境は大きく変動しています。パラダイムシフトが進み、不確実な時代に突入した現在、名市大はいかに進化してゆくべきか?それに向けて、現在名市大が取り組んでいる中から、ここでは7項目をご紹介し、明るい未来を切り拓く担い手に期待を込めてエールを送りたいと思います。

 1つ目は、名市大の明るい未来に向けて「名市大未来プラン2021」が約100名の全学の教職員により作成されたことです。これからは教職員が一体となり強い信念を持って48のプランを実現してまいります。名古屋市や同窓会はじめ皆様方からの温かいご理解とご支援をお願い申しあげます。

 2つ目は、「救急災害医療センター」の建設です。最先端の医療設備・約28,000㎡の規模の大きさは全国トップクラスです。令和7年(2025)オープンに向けて名古屋市の全面的な支援を得ながら作業が進んでいます。この度の新型ウイルス感染症では東部医療センターなどと連携して治療にあたってきたように、救急医療は言うまでもなく、大災害時においても医療をリードする中核的医療機関として市民の健康と安全を守る使命を担います。

 3つ目は、名古屋市立東部・西部医療センターが令和3年(2021)4月から大学病院になり、1800床からなる大学病院群が誕生することです。その規模は全国の国公立大学では最大です。3つの大学病院がそれぞれの特徴を生かすことにより機能分化を進め、高度先進医療の推進、優れた医療人の育成、先端的研究の世界への発信、そして病院経営の安定化を遂行することにより地域医療に貢献します。

 4つ目は、わが国が超高齢社会になった現在、理想とする医療は、高度急性期だけでなく回復期医療や在宅医療までの医療を途切れなく市民に提供することです。そこで、それらの医療を横断的かつ俯瞰的に行う「名古屋市医療モデル」を全国初の試みとして発信し、その実現を目指しています。その一つとして、名古屋市の緑市民病院、厚生院、リハビリセンターなどとの連携を深め、多様な領域で働く医療人を育成します。

 5つ目は、デジタル革命やSociety5.0などに対応したデータサイエンス、リカレント、都市政策など学際的な学問体系の構築です。文理融合の考えのもと女性や若手の活躍を求め、海外への展開、他大学や他病院、市立中高等学校との連携や統合など固定概念にとらわれない取り組みを追求します。

 6つ目は、分散したキャンパス問題です。現在は4つですが、東部・西部医療センターが増えると6キャンパスになり、さらに増えることが予想されます。しかもそれらの施設や設備の中には老朽化が見られます。そこで施設整備の将来計画の議論が始まりました。今回の新型感染症で学んだように、離れたキャンパスの不都合をデジタル化でカバーできることも視野におきながら、大きな課題に取り組みます。

 最後7つ目は、名市大がさらに発展するために設置団体(名古屋市)との関係をより強固にすることです。そのためには、名市大が名古屋市の組織図の中で存在感ある位置を持つことで、名古屋市とのパイプをさらに太くすることが重要です。これからも名古屋市と良き関係を保ちながら、自律的な大学運営を築くことにより、優秀な人材を育成し、優れた教育や研究を世界に発信する大学になるのだと考えます。

 名市大はこれからも明るい未来を切り拓いてまいります。皆様からの温かいご理解とご支援を引き続きよろしくお願い申し上げます。