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看護学部・看護学研究科

トピックス

地域貢献活動

 現在の看護学研究科の組織的な地域貢献活動は看護実践研究センターによる事業、看護実践教育共同センターによる事業、こころの看護相談事業である。他に、名古屋市立大学の市民公開講座、名古屋市等との連携による事業にも協力している。

看護実践研究センターによる事業

看護実践研究センター設立の経緯
 看護学部独自の地域貢献事業を開始したのは、平成18年(2006)である。看護学部が設置された平成11年(1999)から数年間の社会貢献活動は、年間2-3回の公開講座開催と教員個々による地域住民等を対象とする講演会や研修会指導だけであった。そこで、社会との連携や社会貢献を視野に入れ、地方自治体等と連携した研究や保健・医療・福祉産業と連携した研究、いわゆる地域連携・産学官連携を視野に入れた看護学部・大学院看護学研究科のあり方等を検討するために、平成15年(2003)に地域貢献委員会が設置された。地域貢献委員会は、まず、看護学部教員を対象として地域連携に対する調査を行った。その結果をふまえ、看護学部の地域貢献事業は、将来の本格的な地域貢献事業の実施、付属施設の発足などを視野に入れ、現職の看護職者の専門性向上に資することを目的として企画された。そして、看護学部の人的資源の有限性を考慮し、かつ、貢献事業による地域住民や名古屋市民への効果の波及が期待できる内容を考え、平成18年(2006)に「なごや看護生涯学習セミナー」として3つのセミナーを実施するに至った(資料1)。
 翌平成19年(2007)には事業を拡大し、現在の地域貢献事業の基盤を構築することができた。すなわち「なごや看護生涯学習セミナー」を継続・発展させるとともに、新しく「なごや看護生涯学習セミナー公開講演会」(後の「なごや看護生涯学習公開講演会」)を年1回開催することとした(資料2)。さらに、「看護研究サポートプロジェクト」(後の「看護研究サポート」)と称して、臨床看護研究の個別指導も開始した。いずれの企画も参加者から肯定的な評価が得られ、看護職者のニーズに合致した地域貢献事業であることを認識した。また、特筆すべきこととして、運営組織に名古屋市立大学病院看護部の教育担当者が加わったことが挙げられる。これにより、臨床現場のニーズに即した企画となり、各事業を円滑に実施できるようになった。
 しかし、地域貢献事業の継続には2つの大きな問題があった。経費とマンパワーである。地域貢献事業を成功させるためには対象者のニーズに合った企画が重要であり、その周知が不可欠である。また、受講申込者への対応と受講者名簿の管理、セミナー講師への対応、教材の作成、配付資料の印刷など、経費もマンパワーも必要である。経費については、平成18年(2006)は看護学部特別研究費、平成19年(2007)年は名古屋市立大学特別研究奨励費の交付を受け、その後は看護学部運営費から捻出されている。また、平成24年(2012)からは、名古屋市立大学全体で地域貢献事業における受益者負担の考え方が広がり、受講者から受講料を徴収することとした。マンパワーについては、看護学部教員6名と名古屋市立大学病院看護部職員3名で構成される地域貢献委員会を中心とし、看護学部事務職員1名の協力を得て事業を実施した。しかし、各事業の企画から総括に至る作業量は多く、受講料徴収に伴う金銭管理も大きな負担であった。また、看護学部教員や看護部職員にセミナー等の講師を依頼しているが、大学全体の地域貢献活動の拡大によって他の企画も多く、さらに人員削減や欠員があるなかで協力を得るのが難しくなりつつあった。
 そこで、地域貢献委員会を発展させた新しい組織が必要であるとの結論に至り、平成24年(2012)4月、看護実践研究センター(以下、センター)が設置された。しかし、センターが機能するためには、組織構成や運営方法を議論する必要がある。そのため、まず、看護実践研究センター運営委員会を設置して「看護実践研究センター運営規程」を作成し、活動の基盤を整えた。そして、平成25年(2013)度から、看護実践研究センターが本格稼働し、地域貢献委員会の事業を引き継いだ。


資料1 なごや看護生涯学習セミナー


資料2 なごや看護学修セミナー公開講演会


第1回なごや看護生涯学習セミナー公開講演会
第1回なごや看護生涯学習セミナー公開講演会


看護実践研究センターの目的と組織

看護実践研究センターの目的は、以下の3点である。

  1. さまざまな場で働く看護職者との共同研究を推進することにより、臨床の場に存在する問題点の掘り起こしを図り、その解決法に向けた科学的研究を推進し、そこで得られた成果を臨床の場にフィードバックする。
  2. より高度な看護実践の向上を目指した研修を行うことで、よりよい医療・看護の提供をめざす。
  3. 他職種と連携した地域交流・地域貢献活動を行うことにより、地域の保健・医療・福祉に貢献する。

 

 また、センターの組織は、当初、センター長(看護学部教授兼務)、センター特任教員、センター事務職員を予定していた。このうちセンター長はセンターが実質的に稼働した平成25年(2013)4月に任命され、センター事務職員も同年9月に雇用された。しかし、センター特任教員は予算の都合上雇用できなかった。
 看護実践研究センター運営委員会はセンター職員と運営委員で構成される。運営委員は、看護学部教授会で選出された看護学部教員と大学病院看護部より選出された看護職員である(図1)。このように看護学部と病院看護部が協力して事業の企画・運営を行っている点が本センターの大きな特徴である。


看護実践研究センター組織構成


看護実践研究センター設立後の地域貢献事業

 地域貢献委員会で実施していた事業を継続するとともに、平成25年(2013)からは「地域連携セミナー」を毎年開催している。さらに、平成26年(2014)からは名古屋市昭和生涯学習センターとの共催による講座も開催している。
 各事業の趣旨と実施状況は下記の通りである。これらの事業は平成25年(2013)に開設した看護実践研究センターのホームページ(https://www.nagoya-cu.ac.jp/nurse/center/index.html)で開催案内と開催報告を行うとともに、同年から毎年発行している報告書1)に詳細を記載している。

看護実践研究センターによる地域貢献事業

開始年度 事業名 趣旨・実施状況等
平成18年
(2006)
なごや看護生涯学習セミナー 愛知県内の保健医療職者を対象に、より専門性を高め地域住民へのサービス寄与につなげることを目的とする事業である。毎年、看護研究セミナー3件、看護実践セミナー3-4件を実施している。
平成19年
(2007)
なごや看護生涯学習公開講演会 地域の保健医療職者が求めている知識、情報、話題などを提供し、結果として市民の皆様に対する医療の質向上に貢献することを目的としている。その時々の医療情勢をふまえてテーマを選定し、その分野で活躍中の講師を招聘し、毎年1回開催している。
平成19年
(2007)
看護研究サポート 看護職者が個人またはグループで行う看護研究に対して、看護学研究科の教員がそのプロセスや研究成果の発表を支援することを目的としている。臨床の場にフィードバックできる科学的根拠に基づいた看護研究の推進を通して、よりよい看護の提供に貢献することを目指している事業である。毎年8テーマ前後をサポートしている。
平成25年
(2013)
地域連携セミナー 市民の皆様と保健医療福祉関連職種の方々が連携して取り組むべき社会的な問題を取り上げている。さまざまな立場の人々が一緒に考えることで、解決の糸口や新たな方策の発見につながることを期待している事業である。毎年1回開催している。
平成26年
(2014)
名古屋市昭和生涯学習センター共催講座 昭和生涯学習センターと共同で市民のニーズに沿った講座を企画している。市民は大学という普段入ることの出来ない場で、専門的で先進的なことを低額で学ぶことができ、大学としては、学生以外にも学びを提供するという地域貢献ができる事業である。4回の連続講座であり、毎年1回開催している。

看護実践教育共同センターによる事業

 名古屋市立大学看護学部と名古屋市立大学病院看護部によるユニフィケーションを推進するために設置された看護実践教育モデル検討委員会(現看護実践教育共同センター)においても、平成27年(2015)から地域貢献活動を行っている。地域住民の健康促進が目的であり、「さくらやま知っとこ!セミナー」と称して毎年2-3回実施している。対象は大学病院の外来を受診する患者または入院中の患者とその家族であり、名古屋市立大学病院の外来の一角を使用して開催するため、誰でも気軽に参加できる。看護学研究科の教員と大学病院の看護師が協力して毎回テーマを決め、1回30分のミニセミナーを実施している。毎回約20名の参加があり、アンケートでは「分かりやすかった」「家で実施してみようと思う」等の好評を得ている2,3)

こころの看護相談事業

 看護学研究科では、平成30年(2018)3月から医学研究科・附属病院および人間文化研究科と共同で設置した医療心理センターにおいて、「こころの看護相談」を行なっている。相談の内容としては、うつ病などのこころの病気を持つ方やご家族からの相談、不妊についての相談、子育てについての相談などである。こちらでは、看護師、保健師、助産師の資格をもつ者がそれぞれの専門性を活かしながら相談に応じている。また、看護職の方々のメンタルヘルス支援のために、仕事上の悩み相談やキャリア相談などを行っている。
 利用者も徐々に増え、令和元年(2019)度は104件の相談を受けた。相談に来られる方々は、医療機関ではゆっくり悩みごとを話せない、適切な専門性をもった医療者に出会えなかったという方が多いように思う。既存の制度では十分に対応できないような方々の手助けになれるようにこれからも工夫していきたいと考えている。
 平成30年(2018)度には、開設記念シンポジウム(テーマ:患者さんを支える家族を支える)を行い、約70名の参加を得た。また、相談に利用する部屋は、大学病院外来棟4階の医療心理センターに加え、本学芸術工学研究科鈴木賢一教授と研究室の学生の協力を得て、看護学部棟6階の相談室を新たに癒しある空間へとリニューアルを行い、今まで以上に相談に適した環境が整備された。今後も広報などに力を入れ、地域で困難を抱え、助けを求めている方に少しでも支援が届けられるように努力していきたいと考えている。

相談室案内板

芸術工学研究科鈴木賢一研究室の協力により、リニューアルされた相談室

芸術工学研究科鈴木賢一研究室の協力により、リニューアルされた相談室


参考

  1. 看護実践研究センター報告書,平成25年度~令和元年度.
  2. 名古屋市立大学看護実践教育モデル検討委員会:平成27年度名古屋市立大学看護実践教育モデル事業の活動報告.名古屋市立大学看護学部紀要,15,65-69,2016
  3. 名古屋市立大学看護実践教育モデル検討委員会:平成28年度名古屋市立大学看護実践教育モデル事業の活動報告.名古屋市立大学看護学部紀要,16,63-68,2017