総合生命理学部・理学研究科

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生物多様性研究センター

設立の経緯
　地球上に生命が誕生して以来、膨大な数の生物が進化を重ねて誕生・消滅を繰り返し、地球上には現在1,000万種を越える生物種が生息すると言われている。しかし同時に現代では、かつてないほどの高い速度で種が絶滅していると言われている。人間の活動がいろいろな生物を絶滅に追いやり、結果として地球生態系の持続性への懸念を招いたことへの反省から、このかけがえのない生物多様性を守るために生物多様性条約が結ばれた。名古屋市立大学システム自然科学研究科（令和2年（2020）度より理学研究科に名称変更）では、生物多様性条約第10回締約国会議（CBD COP10）が平成22年（2010）10月に名古屋で開催されたのを機に、生物多様性研究センターを設立した。

センター組織
　令和2年（2020）時点で、名誉センター長の杉浦昌弘氏のもと、センター長の熊澤慶伯、センター員の木藤新一郎、鈴木善幸、村瀬香、湯川泰、プロジェクト推進員の横山悠理、センター研究員の川瀬基弘、藤谷武史、村松正雄の各氏が所属している。センター長およびセンター員は、名古屋市立大学理学研究科の常勤教員であるが、平成30年（2018）度に新設された総合生命理学部で学部教育にも携わっている。

活動の内容
　生物多様性研究センターでは、種や遺伝子の多様性を作り出してきた進化の過程や遺伝子の環境に対する応答能力などの研究を行うほか、さまざまな動植物の試料の収集・保存、ならびにDNAバーコーディング等の解析を行ってきた。学外の専門家と連携して、日本産コメツキムシのDNAバーコーディングを初めて行い、英文学術誌に論文発表した。この成果は日本農業新聞でも記事として大きく取り上げられた。このような研究活動を昆虫類、貝類、鳥類など様々な分類群で実施して論文発表するとともに、イベントへの出展、市民講座の開催、セミナーの主催などを通して、得られた成果の社会還元に務めてきた。当センター設立後の約7年間は、初代センター長の森山昭彦氏（現中部大学教授）のもとで、東山総合公園の動植物のDNAバーコーディングなどのプロジェクトにも取り組んだ。現センター長の熊澤慶伯は、名古屋圏の動植物に加え、東南アジアの魚類なども研究対象とし、地域貢献と国際化の2つの目標を掲げている。後者の目標を達成するために、タイ王国カセサート大学アンダマン沿岸研究開発ステーション、インドネシア共和国ブラウィジャヤ大学漁業海洋学部と共同研究協定を締結した。今後も地域や世界の人々の幸せのために、生物多様性の保全や持続的利用を促進する研究活動を行っていくつもりである。

標本庫
　生物多様性の研究においては、多様な種の標本を収集し、分析し、保管するというプロセスが欠かせない。当研究科では、生物多様性研究センターの活動をサポートする組織として、標本庫を設置した。当標本庫の特徴としては、DNA研究を強く意識した保存方法が採られていることである。大半の標本はホルマリン標本ではなく、冷凍標本かアルコール液浸標本の形で保管がなされている。令和2年（2020）7月時点で動物標本が約5000点、植物標本が約300点登録保管されている。