名古屋市立大学の歴史

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第Ⅶ章 名古屋市立大学の法人化と近年における発展

5. 総合生命理学部の成立

(1)総合生命理学部の設置

 平成30年(2018)4月、名古屋市立大学に総合生命理学部が誕生した。名古屋市立大学7番目の学部である。総合生命理学部には、総合生命理学科が設置され、入学定員は30名であった。教員は28名、初代学部長は湯川泰(植物分子生物学)である。
 ここで、『名古屋市立大学総合生命理学部設置認可申請書』から、総合生命理学部の設置の目的、人材養成の目的、教育理念などを記しておく。総合生命理学部は、大学院システム自然科学研究科を母体として設置された学部である。同研究科は、生命科学を中心に自然科学分野を広くカバーする教員組織と研究設備がすでに整っており、同研究科と構成員を同じくする自然科学研究教育センターを母体にすることで、学部の設置がスムーズに成し遂げられるとある。教育研究上の目的は、「本学部に於いては、生命科学を中心として理学の基礎を総合的に理解した上で、各自の専門分野の教育研究を行い、既存の学問領域の枠を超えて柔軟な思考のできる人材を育成し、地域に貢献することを教育研究上の目的とする」と定めた。人材養成の目的は、

  • 生命科学を中心に、自然科学全般と数理情報科学の基礎を身に付けた上で専門分野を学修することで、柔軟な思考ができる人材を養成する。
  • 理学の総合的な学修を通じて、情報収集力、理論的思考力、企画力、実行力を備え、イノベーションの創出に貢献する人材を養成する。
  • グローバルな視野を持ち、実用的なコミュニケーション力を身に付けている。
  • 情報を効果的に整理・分析し、公立的に作業を進める能力がある。

とする。具体的には、①イノベーションの創出に貢献する人材、②グローバルな視野を持ち地域発展に貢献する人材、③理系の教育に携わる人材、を養成するとしている。学科・コースとしては、総合生命理学科の1学科とし、中に「生命情報コース」と「数理物質情報コース」の二つのコースを配置した。このうち前者は、理学の基礎を全般的に学び、その後に生命科学の専門分野の授業科目を履修するコースであり、後者は、理学の基礎を全般的に学び、その後に物質科学や数理情報科学の専門分野の授業科目を履修するコースである。また、取得可能な資格課程として、高等学校教諭一種免許状(理科)の教職課程が設置された。
 こうして名古屋市立大学に総合生命理学部が発足した。それは意欲に満ちた若々しい学部として誕生したが、ただ校舎、設備はなお十分ではなく、その再整備は今後の課題になっている。

総合生命理学部の講義の様子
総合生命理学部の講義の様子

(2)大学院理学研究科への発展

 システム自然科学研究科は、当初「生体情報専攻」を設置していた。これは生命科学と情報科学の融合を企図して設置された専攻であった。それから15年後の平成27年(2015)、専攻名を「理学情報」に変更し、学位名称を「生体情報」から「理学」へと変更した。これは、一つは、研究科成立から15年間が経過し、研究科の教育研究内容が自然科学の諸分野(物理・化学・数学など)を含む広い分野を包含するものに発展したことに基づく変更であった。もう一つは、設置の準備が進展した学士課程(学部)の発足を見据えての変更でもあった。
 理学情報専攻は、「生命情報系」と「自然情報系」の二つの系から構成され、博士前期課程では系ごとに異なるカリキュラムを設定し、博士後期課程では両系共通のカリキュラムを設定した。また、社会人特別選抜制度、昼夜開講制、高専推薦特別選抜制度、長期履修制度が定着し、名古屋市立大学大学院のすべての研究科で実施されているTA制度、RA(博士課程研究遂行協力)制度、学術論文投稿支援制度、国際学会参加旅費支援制度などの諸制度が発展、定着して、学生にとってより学びやすい環境が定着した。
 その3年後の平成30年(2018)4月、総合生命理学部が誕生した。これを受けて、大学院システム自然科学研究科は、令和2年(2020)4月、大学院「理学研究科」に変更された。設置された専攻は「理学情報専攻」で、3年前の変更を継承するものであり、その中を「生命情報系」と「自然情報系」の二つの系で構成することも同一であった。理学研究科理学情報専攻は、生命科学、物質科学、数理・情報科学の各分野において科学技術の発展に寄与することを目的とし、また分野を横断して柔軟な思考ができる理系専門家、および総合的な視点に立って判断できるリーダー的人材の育成を目指している。また、高等学校教諭専修免許状(理科)の教職課程を設置している。

参考文献
『名古屋市立大学総合生命理学部設置認可申請書』2017年
『名古屋市立大学 総合生命理学部・理学研究科』パンフレット、2020年