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マンデーサロン開催報告 新任教員着任講演会


3回に渡り、ZOOMにて新任教員着任講演会を開催いたしました。
今回は、講師の各先生方に発表内容をご報告いただきました。


<第1回>
日時:2021年5月31日(月) 16:30~18:00

●伊藤亜矢子先生 「スクールカウンセリングと学級アセスメント:学校臨床心理学の視点から」

 マンデーサロンでは、これまでの研究教育歴と心理臨床や研究についての私の考えをお話しました。研究実践の具体として、学級風土研究やスクールカウンセリング実践に触れました。私がめざす心理臨床は、自分では環境を選べない立場にある子ども達に、周囲の理解も含む心理面からの環境調整によって支援を行う学校臨床実践です。研究面では、私にとって研究と実践は分かちがたいもので、実験室実験でなく、実践上の課題を実践の場で、実践の場の人々と解決にむけて探究する実践研究を行って参りました。不登校を減らしたいA区の実践研究(不登校減りました)、荒れを解決したいB区での実践研究(荒れ収まりました)などです。貴重な発表機会をありがとうございました。


●林敏博先生 「SDGsでつなぐ国際理解教育~地球子ども広場と大陸間教育活動~」

 グローバル化、多文化化が加速度的に進む現在、地球規模の問題に対して国際社会の一員として、協働して問題の解決にあたることができる人材育成が求められ、地球時代の教育の在り方が問われるようになってきた。大切なことは、課題を他人事としてとらえるのではなく自分事ととらえることができるような活動をつくり出すことである。
 そこで、国際理解教育としてグローバルイシューである“水”をテーマに、ローカルな水問題から地球規模の水問題に至るまで、大陸を越えた子どもたちの協働的な学びをつくり、“どうすれば水問題を解決できるのか”、“自分たちには何ができるのか”を考え、最終的にそれぞれの思いや夢を歌やミュージカル、影絵で表現し合った。身体表現と音楽のリズムは、国境を越えて共有できる。この活動を「大陸間教育活動」と位置づけ、これまでの実践を紹介した。


●安藤理恵先生 「生徒の英語力を向上させるオーラルインタプリテーション 名古屋市立北高等学校の実践」

 オーラルインタプリテーションとは、読み手が英文の伝える内容を解釈し、それに合わせて声や表情、時には体や手に持つスクリプト自体を利用して聴衆に英語でメッセージを伝える、「Oral」広い意味での「口頭の」、「Interpretation」「解釈表現」です。名古屋市立北高校では、校内スピーチコンテストにおける作品の相互発表、また校外フェスティバル(コンテスト)への参加を通して、英文解釈と運用能力の向上に活用しています。著名なスピーチを体現する学びを通した高度な英文の理解と、またその背景を知ることによる国際理解教育の実践で、生徒は英語学習の面白さを再発見し、協働作業の中での対話を通して、自発的に学ぶ力、英語運用能力、自己肯定感を向上させています。英語教育の多角的で効果的な手法として、実践の経緯と実際の作品の紹介をさせていただきました。

<第2回>
日時:2021年6月28日(月) 16:30~18:00

●毛利雅子先生 「日本のグローバル化と司法通訳人」

 世界はいまやグローバル化の只中にある。その中で、モノ、カネ、情報とともに日本に流入してきたヒトの司法通訳人として、日々、言葉に対峙している筆者の視点からの問題提起と提言という観点から、また通訳人でもあり研究者でもある立場から講演した。法廷は裁くものと裁かれるもの、まさにコミュニケーション開始段階から権力関係が顕在し、外国人被疑者にとっては一生を決定づけるかもしれない重大な場であり、司法通訳人の責務の重要性、言語の果たす役割、加えて、現在の日本では被疑者にも被害者にもなりえる在留外国人・訪日外国人の立場も鑑みて、言語と司法の関係を論じた。


●滝澤みか先生 「室町末・戦国期における軍記物語の改作」

 本講演は、日本の中世に成立した、いくさを書いた文学作品の一つである『保元物語』および『平治物語』を研究することで何が見えてくるのかをテーマとしたものである。
 古典文学は、多くは人の手で書き写されることで継承され続けてきた。中でも軍記物語と呼ばれる、日本史上に実際に起きたいくさを題材とした作品の場合、内容が異なる改作本が多く作られた。『保元物語』『平治物語』は、室町末・戦国期に物語の改作の最終段階に位置する「流布本」と呼ばれる本が成立している。この流布本の内容は教訓的になっているという特徴を有するが、近代においては時勢に則り、全く異なる意図で社会に発信されている。こうした例からも、自分自身で文学作品の本文に向き合う意義が見えるのである。


<第3回>
日時:2021年7月26日(月) 16:30~18:00

●吉田輝美先生 「高齢者介護施設の感情労働と高齢者虐待」

 感情労働はホックシールド(1983)が提唱した概念で、「職務内容の一部として求められている適切な感情状態や感情表現を作り出すためになされる感情管理」を必要とするものです。介護現場では、利用者やその家族のなかに適切な精神状態を作り出す対応が求められます。それらに疲弊しストレスを蓄積させていく介護労働者は、やりがい喪失、無力感を抱き、怒りや悲しみが湧いてきて暴言や暴力に至ることも起きます。
 雇用者が高齢者介護施設での高齢者虐待を予防するために、コミュニケーション能力トレーニング、スーパーバイザートレーニング、感情コントロールトレーニングを円環的にシステム化していくことによって、介護労働者の感情活動をマネジメントし、高齢者施設の虐待防止を図っていくことが必要であると私は考えています。このような考えのもと、今後も事業所向けに、感情労働の視点で取り組む高齢者虐待防止研修を提供していきたいです。


●山本竜也先生 「認知行動療法におけるエビデンス-症状の改善を超えて」

 本講演では、臨床心理学のオリエンテーションのうち、認知行動療法のエビデンスについて話題提供を行った。認知行動療法とは、ものの見方考え方(認知)や振る舞い(行動)に焦点を当てた臨床心理学的支援法であるが、これまでは症状の軽減に着目されてきた。そのような中、ポジティブ心理学などの潮流の影響を受け、認知行動療法においても症状の改善にとどまらず、より充実した自分らしい生き方ができるように支援するようになってきている。これらの最近の動向について概説したのち、上述の考え方を踏まえて話題提供者の研究テーマである「うつ病への行動活性化療法」について自著の論文を紹介した。最後に、臨床心理学的支援、研究だけでなく、学生指導(教育)にもこれらの考え方は応用できることを示唆した。