座談会

私ですね。僕は4回生です。昭和27（1952）年に入学しました。86歳ですから。

4回生ですか。

同窓会をやっても、半分ぐらいしか出てこないんですよね。亡くなっている人も多いから。昭和32年（1957）に名古屋市へ入って、名古屋市では食品衛生の仕事をやってきました。3年ほどは公害対策の仕事をやっていたんですけど、あとはほとんど食品衛生ですね。

そうですか。入学された頃の思い出話からまず伺えたらと思うんですけれど。

入ったときに南側に広い運動場があって、大きな松が生えておった記憶がありますね。馬術部があってね。ほかの大学はあんまり馬術部があるところはないと思うんですけれども、かっこええなあと思って見ていました。あれは休みの日でも出てこなあかんのですよね。馬を手入れしなあかんから大変です。

僕は人文社会学部というところの所属なんですが、僕のゼミの学生でも馬術部だった学生がいて、夏休みでも田辺通キャンパスまで餌をやりに行ってました。

出てこないといかんですね。

入学して、最初は教養課程でしたか？

2年間、教養にいましたね。あと2年は川向こうの、山崎川の向こうで勉強したんですね。薬学部は川向こうだったから。

川のこちら側が医学部だったんですか。

いや、医学部の教養と一緒なんです。だから同じクラスで医学部もおったし薬学部もおったんですよ。

じゃあ川のこちら側で2年間教養課程の勉強をして。

はい、医学部の連中と一緒に勉強しましたね。

そうですか。3年生になると川の反対側で専門課程を勉強する。

はい。3階建てか4階建ての校舎があって、そこで勉強しましたね。

何か医学部の初期の卒業生の方にお話を伺うと、医学部の人は2年間の教養課程が終わってからさらにもう一回テストがあったと聞きました。

医学部に入りたいのはもう一回テストがあって行きましたね。あの頃は、薬学部に入っても医学部へ行ったのが結構いましたよ。

そうなんですか。教養課程が終わって医学部へ進学する試験を受けた同級生もいらっしゃるんですか。

そういう希望があって、医学部へ進みたいという人は試験を受けたでしょうね。何人かは医学部へ行っていますよ。

とは言え、薬学部にもともと入学した人は、ほとんど薬学部に上がるわけですね。

そうですね。

高崎先生は何回生なんですか。

昭和28年（1953）に入学した大学の5回生です。

その頃のこのキャンパスはどんな感じだったんですか。

第一印象は、まず組が決まっておって、座席の位置も決まっておって、それでまるっきり高校と一緒やないかと思いましたね。大学入ったのにもかかわらず、高校と一緒じゃないかというのが最初の印象でしたね。

やっぱり大学というと自由に座って……。

と思っておったんですけど。

なるほど。授業は大変だったんですか。

授業は、まずは教養2年間ですが、川のこっちでね。普通だろうなあと思いましたが、私はどちらかといえば学部に入ってからよりも教養のときの先生のほうが印象深い。例えば、当時指導教官というものがありまして、クラスにそれぞれ担任の先生があった。3クラスあってそれぞれの担任の先生が。私のクラスは、豊島錬三先生という植物学の先生。その先生がいろいろ親切にしてくださって、植物のことも研究してみえましたので、私も生物が好きだったもんですから、豊島錬三先生に指導教官になっていただいたわけです。

学生のほうで指導教官を選ぶことができたんですか。

そうです。どなたでもよろしいから指導教官をお願いできた ということです。豊島先生は、昭和11年（1936）に薬専になった年に学校に入られて、最初、薬草園の管理をしてみえてね。昭和46年（1971）に教養部教授で退職されて、昭和63年（1988）にお亡くなりになりました。先生の家は鳴海にあって、アパートをやってみえて、ご自身もそのアパートに住んでみえた。そこへ指導教官をお願いした生徒みんなを呼んでくださったことがある。それで宴会したことがある。

そうですか。名古屋薬学専門学校というのは鳴海にあったわけですよね。

そうですね。

だから先生としては職場に近いところにお住まいだったわけですね。

そうですね。

でもキャンパスがこっちの田辺通に移っちゃったら、そこから通勤されたということですかね。

そういうことですね。それから、入学して1年目か2年目の夏休みの宿題があって、その夏休みの宿題は薬用植物の10種を集めるという宿題。その頃は、センブリがこの東山の林の路傍にまだ幾らでも生えておる時代だったんです。だからそんな頃は、薬用植物10種集めろと言われてもまあまあ集められたんですね。今はちょっと無理だと思いますけど。そんな宿題があったなあ。
豊島先生は昭和46年に退職されてからは、緑区の薬剤師会で健康に関することとか環境に関することとかをいろいろ教えてみえた。

そうですか。

ある時、緑区薬剤師会が主催して健康展というのをやった。同時に自然環境展もやるということで、昆虫標本とか、昆虫に関するパネルなんかを借りたいと言って、薬剤師会の役員と一緒に夜うちまで来てくださったことがありました。その晩はいろいろ久しぶりでお話しました。生物研究部の一番元の先生ですから、その後も生物研究部で時々お目にかかったりはしていました。

卒業後も交流が続いていたんですね。

それから、あともう一人、動物学の先生で高松好文先生という方がみえて、
この方は昆虫専門だった。いつも質問して当てるのは5番の倍数で当てるんですね、私25番だったもんでいつも当たったんですね。

そうですか、なるほど。

あるとき昆虫の質問があって、普通の人はあんまり知らんことですけど、私虫やっていましたので、その質問にちゃんと答えられたんですね。得意だったこともあった。そういうようなことで動物学の高松好文先生と植物学の豊島錬三先生が一番印象に残りました。

それは、皆さんも習った先生方なんですか。

僕は昭和44年（1969）卒ですけど教養のときに習いました。

長瀬先生、先生の入学された頃はいかがだったでしょうか。

入学した頃はここ（田辺通）に校舎があって、教養学部で。

昭和31年（1956）卒の4回生でいらっしゃる。

同級生です。

じゃあもう長い付き合いなんですね。

僕の結婚式の司会やってもらっているぐらいなんで。

両方でやっておる。

そうなんですか。

仲よかったから。

そうですか。鳴海にあった名薬専の時代は交通の便が悪くて、交通至便な名古屋市内に移りたいという悲願があったと資料には書かれています。それがこちらへ移ってきて、田辺通のキャンパスで1年生から勉強されたわけですね。

そうです。

その頃の思い出というのは何かございますか。

私が聞いた話では、ここは以前何かゴルフの練習場かゴルフ場があったという話で。

そうですか。じゃあ、そのゴルフの練習場だったところが大学になったと。

そんなことを聞いたことがあります。

この辺（現在の薬友会館付近）に校舎があったんだよね。

そうそう、ちょうどね。

2クラスしかなかったですからね、薬学部は。上級生と僕らと。

もうちょっと南に池がありましたね。そこに校舎があったんです。

こちらのほうが運動場になっておって、すぐ横に学生会館があったね。

今はもう住宅ばっかりですけど、今は密柑山町というのがありますでしょう。あの辺はもう全部山林だったんです。丘陵だったんです。

ミカンの木がある山だったんですか。

だからその名前になったんだろうと思いますが、林がずうっとありましたからね。ちょっと歩くにもよかったですね。もう今は家ばっかりですけどね。

入ったときはこの裏に川があって、川の向こう側が運動場やったのかな。テニスコートがあって。

ここも北側が山だったもんね。

そうそう。

木がいっぱい生えていたもん。

山崎川とは別にもう一つ川があったんですか。

すぐ裏に。2メーターぐらいの堤防みたいなのがあって、その向こう側に運動場があった。そこにテニスコートがありました。

我々が入学したときは角帽をかぶるのが夢であり、角帽をかぶり、制服を着て、学校に入ったというのが嬉しかったですね。これはそのときの学年の写真ですが、みんな角帽をかぶっているでしょう。

女子学生もたくさんいるんですね。

それからあと、学業のことはあまり覚えがありませんが、とにかく寒かったということね。

校舎がですか。

教養部も寒かったが、もっと寒かったのが川向こうの3年以降の教室はものすごく寒くて、みんなオーバーを着て授業を受けた時代でした。

医学部の1回生と4回生の方も、寒くてコートを着てマフラーをして授業を聞いたと言っていました。

みんなオーバー着て授業を受けた、まだそういうような時代でした。まだ、戦争直後ではないけれど、十分な環境ではなかったんです。そんな時代背景であったということですね。

ここなんか階段教室があったけど寒かったもんね。

川向こうののこぎり屋根の実習室は上のほうにガラスが割れているところがあるんですけど、そうすると冬になると雪が実験台の上に落ちてきたりしました。そういうことがありましたですね。

そうですか。ストーブはなかったんですか。

なかったね。

バーナーであったかくしたよね。

雪にしてはあったかいんだよな。バーナーをばんばんやるから。

卒業予定の年に皆さんは薬剤師の国家試験を受けられたんですか。

いや、卒業してから受けました。

秋にね。今は年に2回あるのかな。あの頃は秋しかなかった。

5月に学科試験があって、僕はもう就職しておったもんだから、大阪で学科試験を受けた記憶がありますね。実地試験だけ名古屋へ来て。そのときはもう新しい校舎やったね。

5月に学科試験をやって、秋に実習試験があって両方受かると合格という形ですか。

そうそう。

私は、学科試験は岐阜薬科大学へ行きましたわ。実地試験はその年のちょうど真夏にあって。山崎川の向こうの薬学部の管理棟で試験をやったんです。あそこは4階が講堂だったかな、広いところでみんなで待っておるんですわ。それで実地試験は大勢ではやれませんから少人数で試験やるんですね。そうすると、4階の待っておる講堂から下を見ると、終わった人が外へ出ていくでしょう。こうやって合図すると、試験問題が何だということを分かるというんです。それで外を見ていましたけど、よう分からなんだ。効果はなかった。

たしか実地は2日間あったんじゃないかな。分析と調剤があったんじゃないかなあ。

昔の学科試験というのは今の厚労省の先生が主体になって作られるもんですから、かなり古い問題が出てくるんですよね。我々のときは、学科試験がそれなりに古い問題でしたね。実地試験がなくて、筆記試験だったんですよ。そうすると、全然大学でやっていることのないようなそういう問題がありましてね。

ちょっと困りますね、受験生としては。

困ったんです。今でも、使わないような試薬を合成しろとか、そういう問題が多いとは聞こえていますよね。その時は、五塩化リンを作る製法を書けと、三塩化リンから五塩化リンを作れと いうことなんだけれども、原料、生成物が液体か固体かわからんし。塩素を通じればいいだろうということは分かるんですけどね。そういう問題が出ましたね。

そうですか。

昔の学生さんは、そういうことをやってみえたそうですけど、我々のときは、もうそういうことは実験としてやらなかったんです。でも問題として残っちゃったんですね。

そうですか。河村先生は13回生でいらっしゃる。じゃあ10年くらいの違いで変わっているんですね。

そうですね。だから、さっき1年に1回というふうに言われたんですけれども、我々のときは、国家試験は2回あったんですね。

そうですか。

それから、いつ頃からかは知らんけど、今はまた国家試験は1回でしょう。

1回です。

ちょうど国家試験が2回あった時代なんですね。

そうです。だから、4月か5月に落ちてもまた9月とか10月に受けられるということでした。今はそこで落っこちちゃうと1年どうしても待たなきゃいかん。

じゃあ2回あるほうが受ける側としてはいいですね。

僕にはいいですけれども。

名市の薬学部はかなり合格率が高かったんですか。

今は高いですね。

僕らのときは高かったね。

1人ぐらいでしょう、滑ったの。1人か2人しか滑っていない。

80人おらんかったか。70人ぐらいで1人滑ったか滑らんか。

ほとんどの人が受かっていたんですけれども、一時期非常に悪くなりましたね。どのぐらいになった。60％ぐらい。

僕たちの頃は悪かったですよ、半分ぐらい。東大か名市大かと言われて。

だから名市大もとうとう合格率が東大並みになったと。

そうですか。

研究者は製薬企業へ就職するんでね。薬剤師の免許証はあんまり重要視しないんです。

なるほど。

我々の頃は77人おって2人落っこちたんですよ。1人はやっぱりあんまり勉強しなかったで落っこちた。1人はちゃんと受かるはずの子だったけど、名前を書かなかった。それで落っこちた。

それは気の毒ですね。

卒業後は、当時はどのような進路だったんですか。

僕らのときは服部さんのように市とか県に入ったり。

製薬会社行った人も多いでしょう。

僕らみたいに製薬会社に入る。武田にあのときは2人行ったもんね。

市や県の薬関係の部署に入るか、製薬会社に入るかという感じですか。

そうそう。

名古屋市に入ったのは同級生で4人いましたからね。

県や名古屋市にここの卒業生が入るようになったのは、昭和29年（1954）卒、第2回生からですね。

そうですか。

1回生は、入る人がなかったですね。受ける人がなかった。行政をやるという立場で官公庁を受けた1回生はまずいなかった。2回生からはいろいろ。

その後は行政にはかなり何人も行かれたわけですか、市も県も。

毎年2、3人ぐらいですね。

それから病院行ったやつはおるな。

病院の薬剤部に勤務するという形ですか。

薬剤師としてね。

保健所から病院へ行くこともあるし、一緒の組織だったもんだから、保健所から病院へ行った人もいたね。

卒業されてから、専門性を活かした就職だったと思いますけれども、楽しかった思い出だとか御苦労された思い出はいかがですか。

それはメーカー行けば大変です。

大変。

転勤だらけだしね。

何回ぐらい転勤されたんですか。

入社が大阪でしょう。一番初めの入社は大阪支店で、それから名古屋支店へ配属されて、大阪へ行って、福岡へ行って、それから大阪へ戻って、名古屋へ来て、東京へ行って、京都に行ってというように、転々としていましたね。最後にまた名古屋へ戻ってきて定年になりました。

そうですか。

大きいところはそうだよね。

それは大変ですね。ちょっと落ち着いて慣れた頃になるともうすぐ異動みたいな感じですか。

そうですね、一つの担当も3年間ぐらいですかね。だからここの市大病院も3年ぐらい担当しましたよ。市大とか名鉄病院とか、中京病院とか。

お子さんの学校が大変ですね。

子供は、長男は幼稚園へ3つ行っていますかね。名古屋で入って大阪へ行って、それから最後に福岡へ。中学校もたしか3つ行っておるんじゃないですかね。最後はここの汐路へ来ました。この地区に社宅がありましてね。道の向こう側に社宅が。

そうですか。製薬会社の病院担当みたいなお仕事だったんですか。

私はね。薬局回る人もおるし病院回る人もおるし。

名古屋市立大学病院でも何か製薬会社らしい方、今でもいらっしゃいますね。

おるはずですよね、プロパーがね。

今のプロパーは大体事務屋だもんね。薬剤師じゃないもん。

薬剤師を採れんでしょう、今。

薬剤師は行かないからね。

そうなんですか。

僕らが大学病院を担当した頃は、市大には菅原先生とかかなり有名な先生もいらっしゃいましたよ。

そうですか。

愛知県の病院はほとんど回りましたね。

大阪や東京でも同じような仕事をされたわけですか。

そうです。福岡はちょっと仕事が違っていて事務のほうをやっていましたけど。

行政の方はどんな感じの仕事が多かったんですか。

保健所へ入って、食品衛生ですから、添加物の関係なんかがよく分かるんですよね。保健所は行政の仕事ですから相手を納得させんと話が進まん。でも、僕は直接的には薬のことは担当しなかったですね。名古屋市も最近は薬務行政をやるようになったんですけど、僕の頃はまだ薬務行政は名古屋市はやっていなかったから、薬務行政は全然やっていないですね。

そうですか。高崎先生は県にお勤めだったんですか。

私は県におりまして、食品衛生とか環境衛生も担当したことはありますが、基本的には薬務課におって薬務行政をやっていました。その中にいろんな仕事がありましたけど、珍しいかなあというのは麻薬取締員、いわゆる麻薬Ｇメンというやつね、あれもやりましてね。

かっこいいですね。

名古屋城の東北の角に射撃訓練場があって、薬務課に拳銃が2丁あったんですわ。弾丸は使わんと劣化するもんですから、古いやつは使わないかんで。それで、愛知県に厚生省の東海北陸地区麻薬取締官事務所があって、本当の麻薬Ｇメンたちがおるんですわ。いつもそこと付き合っておるもんですから、厚生省の麻薬取締官事務所の人に連れていってもらって年に1回は拳銃の稽古をやりました。

当たるもんなんですか、的に。

上手な人は当たりますね。私は中間ぐらい。変わったことといえばそういうこともありました。

実際に取り締まって逮捕したこともあるんですか。

取締りはいわゆる麻薬Ｇメンがやって、我々はどちらかといえば医療麻薬の取締りをするので、病院や診療所を回って麻薬を適正に使っておるかどうかの立入検査をずうっとやってきた。そこの中で中毒者が出ますもんで、中毒者の家へ行って、調書を取って、それを検察庁へ持っていくんです。
あとは薬務行政をやっていますと、名古屋市薬剤師会、愛知県薬剤師会のいろんな方々と接触があったわけですけど、薬学部の昔の先輩の卒業生が大勢いらっしゃいました。

そうですか。やっぱりこの地域では、名市大の薬学部の卒業生の方々がかなり結束されているんですね。

そうですね、同じ業界で活躍されてみえました。

今は大分変わってきましたけどね

河村先生はご卒業後はどんな形で。

私は学部卒業してからちょうど大学院ができましてね。

博士課程ですか。

そうです。その後は、愛知県の衛生研究所、当時は今のがんセンターのところにあったんですけれども、北区に新しいところができて、そこに定年まで勤めました。そこでは食品とか、いろんな部署をやりましたね。食品から環境、それから水道、それから感染症まで。公衆衛生的なことはそこで全部回ったと思います。32年間勤めました。

32年間。大学院の方は第何期生ですか。

大学院は、修士は何回ぐらいかなあ、私が5回生か6回生ぐらいかな。博士課程は私は2回生です。1年前に1人入られて、私がその次に入った。

大学院生時代は自分の研究テーマを持って研究をやられていたわけですか。

私は植物をやっていましてね、植物成分の研究です。

そうなんですね。

伊勢湾台風のときは、僕らはもう卒業してましたね。

昭和34年（1959）だからね。

話を聞いたところでは、授業なんかはほったらかしておいて、とにかく消毒薬の製造というか調合に走り回ったとか…。

学生さんに石灰をまいてもらったわね。

私はちょうど会社でこの辺りの地区を担当していまして、津島の市民病院とか今の海南病院、あれがもう水浸しでこのぐらいまで水の中へじゃぶじゃぶ入っていったことがありますね。

それで最後のときに薬が足らないので、学生が一生懸命作った。正露丸を一生懸命学生が作って配ったという話を大先輩から聞いた覚えがあります。

伊勢湾台風のときに大活躍されたのは、昭和37年か38年、39年ぐらいに卒業される方ですね。私は36年に入ったので、その前の方々ですね。

いっぱい学生さんが来てくれて、オート三輪で回って石灰まいたもんね。そういう記憶がありますね。

石灰が足らんようになっちゃって、北陸の敦賀方面から石灰をいっぱい買ったんですよ。そこでわらわらとトラックに載せ、薬務課で、いろんなところへその石灰を配りに行きました。

薬務課では高崎さんはそこの最前線にみえたんですか。

仕事としてですね。

それで結局、台風のあった9月26日から御用納めの日まで普通業務はもう一切捨てちゃって、台風対応ばっかりやっておった。

12月の御用納めまで3カ月間大変でしたね。

その後の名古屋市立大学薬学部の発展に関して何か御意見や、あるいは将来に向けてご希望がありましたら、何かいただければと思いますけれども、いかがですか。

この前、大学史資料館を見せていただいて、やっぱり歴史というものは大事なので、今のうちに古いものを集めて保管をしないと、これどんどんなくなってしまうと思いました。特に薬学というといろんな装置がありますわね。ガラスでできた装置なんていうのは、今は恐らく作ろうと思ってもできないんじゃないですかね。大きなガラス器具なんかは、時間がたてばすぐに処分されてしまって、各講座には残っていないでしょう。やっぱり昔はこういうのがあったんだと、残しておく必要がある。ただそういうものを保管する場所がない。資料館にもそういう保管の場所をつくっていただきたいですね。

ありがとうございます。そうですね。実はそこが一番頭の痛いところで、保管スペースは今後の大きな課題です。

資料館にも展示されている化学天秤は、私もうちに持っていますけど、あれは飾り物としか使いようがないので。今は直示天秤ということでダイヤルですぐ出てきちゃうんです。昔の化学天秤は振り子の原理で、目盛りを書き取ってね。

今はもうデジタル表示で数字が出る感じですか。

そうです。

薬学部はとても建物が立派になって、ぴかぴかの校舎になりましたけれど、古い校舎からこの新しい校舎になったときに、いろいろな物品が廃棄されたと聞きました。その前に資料館を作っていれば、もう少し歴史的なものが保存できたのかなあと思います。今ちょっと後悔しています。でも、校舎がきれいになってよかったですよね。

話は尽きませんけれども、今日はこれで一段落ということにさせていただこうと思います。本当にどうもありがとうございました。