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文藻外語大学との研究交流会 開催報告


文藻外語大学(台湾)との研究交流会を2回にわたりオンラインにて開催しました。


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文藻外語大学との学生交流会(オンライン)
日時:2023年3月8日(水)16時~18時(現地時間:15時~17時)
内容:コロナと学生生活

<文藻外語大学日本語学科>
李彥臻
このような交流会があって、良かったと思います。
私が知り合っている日本人は皆高校を卒業してすぐに台湾に来た人ばかりで、日本の大学生はどのような生活を送っていたのは知らなかったです。今回のイベントを通して、互いの学校生活をシェア出来たし、言語の勉強の話題にも花を咲かせました。
丁寧な言葉遣いは社会人として常に意識しなきゃいけないことだと聞いたので、社会人になる前に、礼儀正しい話し方を慣れた方がいいと思って普段から気をつけています。そして今回の交流会で日本人の先生にそんなに丁寧な話し方しなくてもいいって微笑みながら言われました。なんか努力が認められた気分で嬉しかったです。

周泓緯
今回の交流会に参加することができて、本当に嬉しく思っています。このチャンスを通じ、日本の先生方と留学生たちと互いの文化や生活を語り合うことは日本語を何年も勉強してきた私にとって一生忘れない経験になるでしょう。また、機会があれば是非とももう一度参加させていただきたく思っております。これからも何卒よろしくお願いします。
        
廖恩婕
今回の交流を契機に、名古屋市立大学と文藻外国語大学のお互いの友情を深めています。みんなはとっても優しいです。日本語学習についての質問をたくさんしたら、みんなは親切に教えてくれます。本当に感謝しています。
交流の時間が短いですが、いろいろ名古屋市立大学のことを知りました。このように台湾と日本の交流を通じて、私たちの視野や国際観もさらに広げられるように心の底から期待しています。これからも様々な交流を続けていくよう願っています。


<名古屋市立大学人文社会学部>
沖恵未依奈
 今回の交流会では、文藻外語大学におけるコロナ禍での学習の様子や活動の様子について学ぶことが出来た。一番驚いたことは、文藻では公平性を保つため試験の様子を録画して提出するということだ。プライバシーの問題はあるが、コロナ禍でもテストの質を落とさず、学生達の学力を保つためには効果的であろう。また、文藻外語大学の日本語学科ではオンライン授業のため、わからない問題があっても質問できない生徒用に、先輩が質問に答える場を週に一度設けているというという話も印象的だった。コロナ禍で希薄化する人間関係を自分たちで工夫して構築していて感服した。

森村水咲  
今回の交流会では、文藻外語大学での生活について知ることができました。オンライン授業では「集中できない」「友達に会えない」という学生の声を聴き、コロナ禍で学びが制限されていたのは台湾も同じであることに気付きました。また、台湾の学生が日本の様々なことを知っていること、日本語がとても上手であったことに驚きました。私自身も台湾の文化や言語を、現地の学生との交流を通して学んでいきたいと改めて思いました。

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文藻外語大学との学術交流会(オンライン)
日時:2023年3月11日(土)14時~17時(現地時間:13時~16時)
報告内容:
・安達信裕 「RESAS(地域経済分析システム)を利用した授業モデルの検討」
・アンドレア・カスティリョーニ 「Talismanic Bones: The Human-Fish of the Ryūgūji Temple in Hakata」
・張汝秀  「産学連携から見られる地域住民の対日感情」
・花岡道子 「日本の高校教育における主権者教育の課題」
・市川哲  「観光土産の移動性と現地化:日本・名古屋とマレーシア・サラワクの事例」
・馬渡玲欧 「廃棄物処分地の『原状回復』をめぐる国立公園の位置づけ」
・佐藤圭司 「日本漢字音と閩南語」
・山田美香 「コロナ下における台湾と日本の不登校」


カスティリョーニ・アンドレア(名古屋市立大学)
タイトル:Talismanic Bones: The Human-Fish of the Ryūgūji Temple in Hakata
The present talk focuses on the socio-cultural transformation concerning the conceptualization of the human-fish (ningyo 人魚) from the medieval to the early-modern and modern periods. As case study the talk analyzes the talismanic bones of the human-fish, which is worshiped at the Ryūgūji in Hakata.


安達信裕(文藻外語大学) 
タイトル:RESAS(地域経済分析システム)を利用した授業モデルの検討
本報告の目的は、RESASを使った授業の可能性について検討することである。RESAS とは、地域経済分析システム( Regional Economy Society Analyzing System)の略称で、経済産業省と内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が提供しており、いわゆるビックデータをもとに地域の現状を容易に可視化できるシステムである。RESASは、インターネット上で公開されており、誰でも利用できるサービスである。それだけでなく、ブラウザ上で、直感的に操作が可能なサービスである。日本では、高校生・中学生以下の学生が、RESASを活用して地域課題の分析し、地域を元気にするような政策アイデアを募集するコンテストが開かれるなど、中高生でも利用可能なシステムである。
報告では、RESASを利用した授業の事例を紹介した。具体的には、日本のインバウンド促進のための政策をグループ発表してもらう際に、日本のインバウンドの現状を分析するためにRESASを利用してもらった。結果として、どのグループもデータに基づいた現状分析ができた。RESASを使うことで、現状の日本の理解の促進が図れたのではないかと考えている。


張汝秀(文藻外語大学) 
タイトル:産学連携に見られる地域住民の対日感情
近年、教育部(文部科学省に相当)が推進する「大学の社会的責任(USR)実践計画」の下で、文藻の日本語学科は文藻周辺の住民のニーズに応えるため、5年前から日本語コースを開き、産学・地域連携によって地域住民の成長を促進する地域教育力を展開し、大学の使命や役割を果たそうとした。
 コロナ禍に見舞われた中、本産学連携は政府の防疫の制限措置を守りながら実施された。しかし、ここ数年、台湾海峡危機をめぐる微妙な政治問題の下で、台湾人が日本への好感度に何かの影響はあるのかを検討しようとした。
こうした社会背景と地域的要請を踏まえた上で、2022年に行われた産学連携は、日本語コースに参加した住民の学習者を対象に、アンケート調査から学習者が日本に親しみを感じ、好感度と信頼度も高いことがわかった。


市川哲(名古屋市立大学)  
タイトル:観光土産の移動性と現地化:名古屋とマレーシアの事例
本発表では観光研究の中でも特に観光土産の特徴をいかにして捉えるかという問題を、移動性(mobility)と現地化(localization)という観点を導入することにより考察した。そのために本発表ではマレーシア、サラワク州の事例と名古屋の事例を紹介した。特にマレーシアにおける、外部社会からもたらされたガラス製品であるビーズを使用した観光土産と、「名古屋めし」の一つであり名古屋の観光土産にもなっている台湾ラーメンを紹介し、これらの特徴を移動性と現地化という観点から分析した。


馬渡玲欧(名古屋市立大学)
タイトル:廃棄物処分地の「原状回復」をめぐる国立公園の位置づけ
本報告では、香川県豊島の産業廃棄物不法投棄事件の概要を述べ、そのうえで廃棄物処分地の「原状回復」をめぐる構想について論じた。特に住民から「瀬戸内海国立公園」としての姿を強調するかたちで「原状回復」の主張がなされていることから、島が位置する瀬戸内海国立公園の状況や歴史的経緯とはそもそもどのようなものなのか、改めて振り返ることにした。報告内では、日本における国立公園の制度化、その特徴(公用制限)、瀬戸内海国立公園の多島海景・パノラマ景について焦点を当てることとなった。また、国立公園の制度化に携わった学者や知識人の「風景」に関する言説については紹介できたものの、瀬戸内の人々が歴史的に見てどのように風景を認識していたのかまでは掘り下げることができなかったため、今後の課題としたい。


花岡道子(名古屋市立大学)
タイトル:日本の高校教育における主権者教育の課題 
 2015年の18歳選挙権実施で、総務省・文科省のプロジェクトチームで編纂した教材が全国の高校生に配布され、「主権者教育」が進められている。多くの学校では「主権者教育」が行われているが、多くは選挙管理委員会を読んで講義や模擬投票を行ってもらうものであり、実質としては選挙教育になっている。元来主権者教育は民間教育運動で長らく使用されてきた用語であり、より幅広い概念を扱ったはずであった。
 現在高校には「主権者教育」以外にも多くの現代的な諸課題をテーマとした教育が持ち込まれているが、2022年度から高校で必修科目となった公共にその多くが盛り込まれている。これらの教育は社会課題を扱うとされてはいるが、配布されている教材からは、その課題の取り上げ方は表面的であり、現実社会に存在するコンフリクトを扱っていないことが見受けられる。このようなアクティブラーニングを繰り返すことは、ただでさえ進展している個人化をさらに進め、忍耐・順応をし、自分の力のみで乗り越えようとするメンタリティを強めてしまうのではないかと危惧している。
 本来の主権者教育は、現実社会のコンフリクトを扱うことが欠かせない。それぞれが権利主体であることを核にした人権教育を基礎に据えた上で、現実社会の矛盾を題材にあるべき国家や社会の姿を考察する手助けを教師が行う。さらに探究型授業を実践することが現在の学校でできる主権者教育ではないかと考える。学校の組織の民主化も必要であろう。私自身は次年度からまた高校の教壇に立つことになるが、そのような教材開発を台湾の事例等も参考にしつつ、今後も検討を継続していきたい。


佐藤圭司(文藻外語大学)
タイトル:日本漢字音と閩南語―日本漢字音の二重母音と閩南語韻母の対応を中心に
 日本語の学習でよく見られる誤用の一つに促音や長音などの発音の問題が挙げられる。これらの誤用は日本漢字音を習得できていないことに起因する場合も多い。
 本研究は、台湾における日本語学習者の漢字音習得の一助となることを目的に、日本漢字音の二重母音「-ui」「-ai」に着目し、閩南語の韻母との対応関係を考察した。考察によって、二重母音「-ui」の場合、閩南語の韻母でも同じように<-ui>と発音するものが6割以上であるという一定の対応が確認された。それに対して、二重母音「-ai」の場合、閩南語の韻母でも同じように<-ai>と発音するものが4割程度にとどまり、対応関係がそれほど高くないことが確認された。


山田美香(名古屋市立大学)
タイトル:コロナ下における台湾と日本の不登校
コロナ下で不登校が増加した日本と増加しない台湾について論じた。日本の場合、不登校の子どもに対する制度設計や支援のネットワークがあるが、すべての子どもが学び続ける環境にはない。子どもの学力低下は本人の問題とされる。
台湾は「ゼロ不登校政策」を行っており、子どもが不登校の場合すぐ通報し、全国ほぼ同一の制度設計で支援のネットワークがある。とはいえ、学校に戻ることが子どもにとって本当によいのかは議論すべき余地がある。しかし多様な学びの機会(多様な教育輔導)がある点は評価できる。また追跡輔導をするなど、子どもに対する支援は最後まで徹底している。
以上のことから、国の不登校支援の在り方・それぞれの個別の学びをどのように保障するのかが課題となる。子どもが「学校に来ない」という状況は、日本は子どもの意見表明を尊重しているのだろうか。台湾は「学校」重視であるが、学校に来る意味とは何であろうか。