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紀要


名古屋市立大学看護学部の紀要(研究論文・刊行物)。
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第2巻(平成13年度) 要約

Elements Affecting the Formation of Maternal Sense:Recollections of Maternity Acquired during Puberty in Parturient Women

This study was conducted to investigate how the formation of a maternal sense during puberty affects the further development of this in pregnant women, to clarify the primary factors for this, and to help predict and support the process of the formation of the maternal sense.
1 . Six puberty factors were detected in the factor analysis. The 1st factor was the family relation factor (satisfaction level in relationships with parents). The 2nd factor was the gender role factor (desire to be-come family-oriented) . The 3rd factor was the maternal behavior factor (nursing children), and the 4th factor was the community cultural factor (interest in community-related information) . The 5th factor was the life style factor (regular life style) , and the 6th factor the self-expression factor (recognizing self and acting based on self) .
2 . Relationship between Age at Time of Marriage and Family Relationship Factor The age group under 19 years showed the fewest factor score. The factor score showed increase with subiect age, and group of 35 to 39 years acquired the highest factor score of 0.346. 3 . In the relation between the above six factors in puberty and the factors contributing to the structure of the maternal sense, the second factor (gender role factor) , the third factor (maternal behavior factor) , the fourth factor (community culture factor) , the fifth factor ( life style factor) , and the sixth factor (self-expression factor) have a positive relation, while the first factor (family relations factor) is negatively associated.
Key words: puberty, formation of maternal sense, childbirth, recollection of maternity

Group B Streptococcus(GBS)による垂直感染に関する文献的考察
-助産学の観点からの感染予防、GBS保菌妊産褥婦へのケアについて-

周産期領域において垂直感染は母体、胎児に大きな影響を及ぼすことがあり、医療技術が進歩し、衛生水準が向上した現在でも重要な課題である。垂直感染として問題となる病原体の1つであるGroup B Streptococcus (B群溶血性レンサ球菌;以下GBS)は、新生児が感染し、敗血症や髄膜炎を発症した場合は重篤となることが多いので、予防が重要である。そこで、GBSによる垂直感染の予防について文献検討し、助産学の観点から垂直感染予防、GBS保菌妊産褥婦へのケアについて考察した。 助産婦業務の中で保健指導は重要な業である。インフォームド・コンセントは危険回避の予防的ケアであるにもかかわらず、GBS感染予防に関するインフォームド・コンセントの現状は明らかではない。GBS保菌者であった場合、次子への垂直感染予防の観点から、次子を妊娠し受診した際にはGBS保菌者であることを情報として医師や助産婦に伝えるように説明する必要があると考えられた。また、GBS保菌妊婦の産道からの垂直感染はしなくとも、日々の生活の中で水平感染する可能性もあり、日常生活の中での手洗いに関する保健指導を行う必要があると考えられた。これらの説明や保健指導は、次子への垂直感染や水平感染の予防につながる保健指導であると考えられた。 新生児GBS感染症の予防法は確立されていないが、助産学の観点から感染予防、GBS保菌妊婦のケアの向上に向け、保健指導を行い、妊娠期におけるGBSに関するインフォームド・コンセントのあり方と妊産褥婦が求めているケアを明らかにする必要があると考えられた。
キーワード:B群溶血性レンサ球菌、垂直感染、インフォームドコンセント、助産婦業務

達成動機研究の概観と看護領域への応用の検討
-健康教育対象者および看護者自身の動機づけの側面から-

達成動機研究の流れを概観し、健康教育対象者や看護者自身の動機づけにおいて、達成動機の考え方を導入することの可能性や課題を検討した。 1.達成動機研究は、達成動機づけを決定しているものが動機そのもの、期待と価値、目標のいずれであるかによって3つの立場に分かれた。 2.達成動機とは、「その文化や社会、あるいは自分自身が価値あると見なしている物事を成し遂げようとする意欲」であると考えられる。競争的・自己充実的な2側面をもち、それらは保健行動や看護者の動機づけに対して、別個の作用をすると考えられる。 3.達成動機は、健康教育において学習者への適切な支援方法を予測・評価するための、学習者の特性把握に使用しうると考える。 4.看護の各現象の中で達成動機とその下位概念の分析、類似概念との比較を行い、その概念を用いた研究を積み重ねるとともに、適切な測定用具が提案されることが求められる。
キーワード:達成動機、動機づけ、保健行動、健康教育、看護管理

記述民族学的方法による更年期女性におけるヘルスプロモーション行動についての検討

更年期女性5名に面接調査を行い、そのヘルスプロモーション行動と影響する因子について、記述民族学的方法により検討した。その結果、食事、睡眠、休息などを意識して良好な状態へと努力している一方で、更年期障害症状があっても受診行動に結びっいていなかった。また、更年期障害症状が強くても、仕事や家事をこなしている状況が窺えた。これは、自分自身を健康だと認識していること、受診よりも仕事や家事を優先させ苦痛に耐えていたこと、受診のきっかけがなかったことなどの影響が考えられた。対象には、自ら体調不良の原因を分析し克服しようとする姿勢が認められ、何らかのヘルスプロモーション行動をとることができていた。このようなセルフケア能力を高め、さらに健康を探究できるよう、更年期女性に対するヘルスプロモーションシステムが必要である。
キーワード:更年期女性、ヘルスプロモーション、記述民族学

看護の"教える・導く"作用の進歩
-脳血管損傷患者の排尿自立に向けての援助にみるその動向-

筆者らが編んだ生活行動援助の文献集I~III(日本看護協会出版会)に収録された"排泄に関する文献"1497件中の、「学習・訓練」の項に分類され、研究方法分類上は「事例」と判断された文献285件のなかから、排尿の自立に向けての援助を主題とした脳血管損傷および/あるいは痴呆の事例37件を対象に、看護の"教える・導く'作用は研究文献中にどのように表れているか、その作用は年代を追って研究的により明らかにされているかどうかについて調査した。その結果、看護の"教える・導く"作用は、1980年以前は、いつ、どのように、という"教える"に焦点がおかれ、"教える・導くのプログラム化が重視されていたが、以後次第に、研究者(看護者)によって看護そのものの一環とみなされるようになってきたことがわかった。本来的な看護の不可欠要素として意識されつつあるといえよう。
キーワード:研究の動向、看護の"教える・導く"作用、排尿の自立、脳血管損傷患者

社会復帰の意向を持っ長期入院精神分裂病者の現状および退院についての認識

本研究は、退院の意向を持ちながら、10年以上の長期入院に至っている2名の精神分裂病患者が持つ、現状や退院に対する意識の特徴について、半構成的面接を通して述べられた患者の体験に基づいて検討したものである。その結果、以下の点が明らかになった。 1)患者は、退院が現実的に困難な理由として、社会資源利用についての情報が不足していることや、家族の状況として受け入れが難しいことを認識していた。 2)患者は、保護的環境である病院の中で、病院に順応するという形で無理をしない生き方を獲得してきたにもかかわらず、社会に適応するための準備をするという意味では無理をしなくてはならないという矛盾を抱えていた。つまり、今の自分にとって社会復帰が実現不可能かもしれないという自己評価の低下が、リハビリテーションなどへの活動意欲の低下へとつながり、現実には長期入院に至っていた。 3)患者は、自分自身が入院に至った理由を病気によるものではなく、家族や周囲の理解不足や、生育歴に影響された自分の対応のまずさにあったと考え、さらに長期入院という経過そのものが、自分の社会適応を阻んでいるとしていた。同時に、過去の体験を消化できず、未だに拘り続ける自分を認識しており、それが現実レベルの不安となり、対処方法が見つからずにいた。 4)患者は、面接を通して、病院の中でどのような生活をし、どのような体験をしてきたかを言語化することによって、客観的に自己を捉え、現状を認識し、洞察することができたと考えられた。
キーワード:精神分裂病、長期入院、主観的な体験、社会状況、対人関係

体験に学ぶ精神科デイケア実習の意義

精神看護学実習では、リハビリテーション看護の理解を深めるために、病棟実習に加えて2日間の精神科デイケア実習を行なっている。本研究は、精神科デイケアでの体験学習の意義を明らかにすることを目的に、学生のレポートから精神科デイケアで学生がどのような体験をしたのか、またその体験をとおして何を感じ、考えたのかについて分析した。その結果、・精神科デイケア実習で学生は、メンバーやスタッフの様子を見る、聞くといった観察体験と、メンバーの一員としてプログラムに主体的にかかわるという体験をしていた。
メンバーと共に行動することで、精神科デイケアの目的や必要性についての理解が深まっただけでなく、メンバーのその人らしさや自己のかかわりのもち方、メンバーとスタッフの関係のあり方などを気づくことができた。精神科デイケア実習でメンバーの一員として体験をすることは、地域に暮らす精神障害者を一人の生活者として理解するだけでなく、対象の個別性を尊重した看護のあり方を考える上で重要な学習体験の機会となっていた。
キーワード:精神看護学実習、精神科デイケア、体験をとおしての学習

地域在住高齢者における外出の概会の特徴と抑うっ状態・主観的幸福感との関連

日常生活が自立していると保健婦が判断した65歳以上の高齢者102名を対象に面接調査を実施し、目的別の外出の機会の特徴、外出の機会と抑うつ状態や主観的幸福感との関連を検討した。調査期間は2001年1-3月で、調査地区は師勝町の2地区とした。その結果、両地区とも仕事や老人・婦人会等による外出の機会は少なく、買い物、受診、趣味の会等による外出の機会は多かった。目的別の外出の機会と抑うっ状態や主観的幸福感との関連では、概ね外出の機会が「ある」と回答した者は「ない」と回答した者より抑うつ状態が低く、主観的幸福感が高い傾向にあった。これらの中で、有意差がみられた外出の機会は2地区で異なり、その要因として対象者の属性が考えられた。
キーワード:地域在住高齢者、外出の機会、抑うつ状態、主観的幸福感