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ESD基礎科目「グローバル経済と環境保全」の紹介



担当者 久保田健市:人間文化研究科(心理教育学科)、教授、(専門分野)社会心理学
「グローバル経済と環境保全」では、「『持続可能な開発』の問題の本質は、グローバルなレベルでの社会的公正の実現にある」という問題意識から、経済のグローバル化、開発と環境、開発における公正の問題を倫理学・経済学・政治学・心理学などの複数の学問領域から焦点を当てて学ぶよう企画された授業です。「持続可能な開発」のための公正とは、重層的な構造をしていると言えるでしょう。つまり、第1には経済的成⻑と自然保護のバランスの確立であり、第2に現世代と将来世代の間の潜在的な成⻑力のバランスの達成であり、第3に先進国と開発途上国間の経済成⻑と自然保護のバランスの実現を目指すことも含まれます。さらに、90年代以降の経済のグローバル化は、国境を越えた人々が相互に結びつきを強め、共利共栄を生み出す機会を増やした反面、先進国と開発途上国間の著しい格差によって、一方では先進国やグローバル企業による富の収奪を、他方では開発途上国による安い労働市場で作られた製品による先進国産業の破壊をもたらすなど、多くの副作用を引き起こしています。こうしたグローバル化の影響は直接日本に住むわたしたちの生活にも及び、自分たちがが決して無縁ではない点にも焦点を当てるよう努めています。
SDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)との関連では、当授業は目標15「陸の豊かさを守ろう」、目標12「つくる責任つかう責任」および目標10「人や国の不平等をなくそう」などに関わるものと考えられます。
初回の授業では、導入として、パームヤシプランテーションのための熱帯雨林開発を題材に、グローバル化・開発・環境の問題を考える視点を身につける目的で、学習が進められます。はじめに、熱帯雨林地域のもつ「恵み」や、パームヤシから精製されるパーム油を世界中の企業が他用途な用途で利用している事実やその背景を学生自身が調べたり、ビデオや写真、統計資料を利用した講義によって知識を得ていきます。次に、日本に住む消費者としての視点から開発や環境の問題を捉えることを相対化させることをねらって、プランテーション開発に関係する当事者の立場になって議論するロールプレイをグループ単位で行います。最後に、問題の解決に向けたアクションについて目を向けさせるとともに、個人的できるアクションから国や地球全体で取り組むべきアクション、また、短期的な目標の達成のためになされるアクションから中長期的な目標実現のためになされるべきアクションまで、アクションの幅の広さ・深さを意識させるようなワークにも取り組みます。
私が担当する「社会的公正の心理学」の授業回では、次のような内容を扱っています。はじめに、地域の豊かな生活に必要不可欠な施設の多くが、周辺住民からはNIMBY(Not In My Back Yard)施設と認知され迷惑がられる現実をワークに取り組んだり、社会的公正に関する心理学講義を通じて学びます。次に、地域開発を巡る多様な視点の存在を理解した上で社会的合意を目指す擬似的な体験を積むことを狙って、石垣島の新空港建設を下敷きにした架空の地域開発問題について、小グループ内で開発賛成派・開発反対派に分かれ、お互いの主張をしたり、相手の主張に反論をする模擬ディベートを実施します。最後に、社会変革のための取り組みや社会運動を行う上で心理学が提供できる視座を講義しています。たとえば、善いことだと認識するだけでは行動に移すことは少なく、やったことで効果があると感じたり、やり続けられると感じられたり、多くの人が参加していると感じられることが、行動を起こす上で重要であることや、価値観の共感が、社会変革のための施策に対する態度や行動の生起にも影響を及ぼすことなどを説明しています。
最後の授業回では、まとめとして、担当教員が分担して、学生のグループと討議をしたり、まとめのワークを行ったりして、その成果を相互に発表する場を設けています。