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行動指針


はじめに

本指針は、医学研究科の学位審査に係わる事件を契機に発せられた学長宣言、「公立大学法人名古屋市立大学は、学位審査を始めとする大学の恒常的な職務の遂行に関連して、決して金品の授受が行われることのない大学とする」を実現する出発点となるものとして、教員の倫理綱領とあわせて作成するものである。

教員倫理は、本来個々の教員が自らの責任において自主的、自律的に判断して対処することが基本であるが、学位審査を調査した特別調査検討委員会の中間報告は、「学位審査に関連して、一部であるが金銭の授受が慣例化していたと考えられる」と指摘している。

学位審査に関連して金品の授受が行われていたということは、あってはならないことである。深く反省しなければならない。

そこで本指針は、今後、大学の恒常的な活動において金品の授受にまつわるような事件が二度と起こらないよう、名古屋市立大学の教員として市民や社会からの期待や信頼に応えるために踏まえなければならない行動規範を具体的に示すものとしてとりまとめた。

なお、本指針として掲げる行動規範には、公立大学法人名古屋市立大学職員倫理規程を始めとする倫理関係規程から積極的に引用し、従来の倫理関係規程の中味が十分わかるように配慮した。

公立大学法人名古屋市立大学教員の倫理に係る行動規範の根源

名古屋市立大学は平成18年4月1日に公立大学法人となり、本学の教員は、すべて地方公務員ではなく、公立大学法人名古屋市立大学の法人職員に移行した。そのため、教員には、本法人が作成した就業規則を始めとした各種の法人規程や個々の教員との間で締結した労働契約がもれなく適用されることとなり、教員と本法人との結びつきは、法人化前よりも格段と強くなっている。教員は、高等教育研究機関における教育研究に携わる大学人として求められる使命と責務はもちろんのこと、本法人の目標達成への貢献、法人諸規程の遵守、職務遂行への傾注など、本法人・本学の構成員としての基本的な責務についても十分応えなければならない。

本学の教員は、すべて公立大学法人名古屋市立大学の法人職員であるが、地方独立行政法人法第58条により、「刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員」とみなされることから、法人化前と同様、収賄罪の適用がある。公立大学法人の教員には、公務員と同様、職務の清廉性、職務の公正とこれに対する社会の信頼を守る必要があるものとされたのである。従って、教員は、賄賂(職務の対価としての不正な利益)と目される金品の授受については、職務の不正の如何にかかわらず、収賄罪が成立することから、疑惑や不信を招くような行為となる金品の授受に関わってはならない。

このように、公立大学法人名古屋市立大学の教員の倫理に係る行為規範には、高等教育機関である大学を担う大学人としての普遍的な倫理から生じてくるもの、名古屋市を設立団体とする公立大学法人である本法人・本学の構成員としての基本的な責務から生じてくるもの、そして、みなし公務員としての一般的な法令上の義務からくるものなどがある。

こうした行為規範の多くは、平成18年度の法人化以降、公立大学法人名古屋市立大学職員就業規則、公立大学法人名古屋市立大学職員倫理規程、名古屋市立大学における研究倫理に関する指針、公立大学法人名古屋市立大学ハラスメント防止対策ガイドラインなどの法人諸規程の形で成文化され、公布されているところであるが、今回の収賄容疑事件を契機とした学位審査に関する実態調査(中間報告)により、これらの倫理関係諸規程の浸透が十分ではなかったこと、そして、遵守のためのシステムが確保されていなかった、又は機能していなかったことが露呈された。 そこで、倫理関係諸規程についての理解を深め、今後の定期的な点検に資するように、基本となる公立大学法人名古屋市立大学職員倫理規程(以下「倫理規程」とする。)に従い、遵守しなければならない倫理に係る行動規範の一般原則を示すとともに、教員の日常活動の諸場面における、倫理関係諸規程などで規定する具体的な行動規範について、以下に掲げることとする。

1.遵守しなければならない倫理に係る行動規範の一般原則[倫理原則]

倫理規程では、職務の執行の公正さに対して疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、本学の業務に対する信頼を確保することを目的に、教員が遵守しなければならない倫理に係る行動規範の一般原則(倫理原則)が定められており、公立大学法人名古屋市立大学職員就業規則(以下「就業規則」とする。)においても同様な定めがある。これらをまとめると、次のとおりとなる。

教員は、本法人・本学の教員としての誇りを持ち、かつ、その使命を自覚し、次に掲げる倫理原則を遵守して職務に当たらなければならない。
  • 教員は、その職務に係る倫理を保持しなければならない。
  • 教員は、法令及び法人の諸規程を遵守し、常に公正な職務の執行に当たらなければならない。
  • 教員は、職務上知り得た情報について一部の者に対してのみ有利な取扱いをする等不当な差別的取扱いをしてはならない。
  • 教員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならない。
  • 教員は、法令及び本法人の諸規程により与えられた職務の遂行に当たっては、当該職権の行使の対象となる者からの贈与等を受けること等による疑惑や不信を招くような行為をしてはならない。
  • 教員は、職務の遂行に当たっては、公共の利益の増進を目指し、全力を挙げてこれに取り組まなければならない。
  • 教員は、勤務時間外においても、自らの行動が本学の信用に影響を与えることを常に認識して行動しなければならない。

2.教育活動における倫理に係る行動規範について

(1)人格の尊厳と基本的人権の尊重
教員の教育活動を始めとした日常活動において、学生の学習する権利の擁護、教員の学問的立場の尊重、教職員相互の人格の尊重など、人格の尊厳と基本的人権の尊重が大学人として求められていることを自覚しなければならない。教員と学生、教員と教員、教員と職員の関係において、セクシュアル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント、パワー・ハラスメント等、いかなるハラスメント(相手方の人格を傷つける行為又は人権を侵害する行為)もあってはならない。
このハラスメントの防止については、公立大学法人名古屋市立大学ハラスメント防止対策ガイドライン、公立大学法人名古屋市立大学ハラスメントの防止対策に関する規程などにおいて必要な事項が定められており、本学に属するすべての教員には、これらのハラスメント防止対策の下、学生、その他すべての大学構成員に対して、勉学・就業に関わる基本的人権を守る責務として、ハラスメントは人権に関わる重要な問題であることを理解し、ハラスメントを行わない、行わせない努力が求められている。具体的な心構えは以下のとおり。
  • 教員はセクシュアル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント、パワー・ハラスメント(以下「ハラスメント」という)といった人格を傷つける行為、又は人権を侵害する行為をしてはならないこと
  • 教員はハラスメントを目撃したり、被害の相談を受けたりした時は、ハラスメント防止対策ガイドラインに沿って、積極的に解決に向けて行動しなければならないこと
  • 教員は、大学とは教育、研究、医療の場であることを常に認識し、ハラスメントのない大学を作るために、常に相手の立場を理解し、適切な環境を整えるよう不断の努力をしなければならないこと
(2)単位認定、卒業判定及び学位審査
名古屋市立大学は、「知の創造と継承を理念として、真理の探究とそれに基づく教育により優れた人材を育成する」ことを、設立の目的の一つに掲げている。いうまでもなく、学生に対する教育活動は、大学教員のもっとも大事な職務の一つである。学生が本学に入学したその日から卒業する日まで、持ち得る技能や知識、経験を用いて積極的に指導して、単位取得、卒業あるいは学位取得へと導かなければならない。
この教員の当然の職務である単位認定、卒業判定あるいは学位審査にあたっては、金品の授受があってはならない。個人的な謝礼であっても、職務の対価としての不正な利益を得た場合には、賄賂と目され、収賄罪が成立することに注意しなければならない。このことは、旧文部省大学学術局長通達(昭和37年4月12日文大大第201号)においても指摘されていることである。
なお、倫理規程では、利害関係者との間における次に掲げる行為を禁止している。
  • 金銭、物品又は不動産の贈与(せん別、祝儀、香典又は供花その他これらに類するものとしてなされるものを含む。)を受けること
  • 金銭の貸付け(業として行われる金銭の貸付けにあっては、無利子のもの又は利子の利率が著しく低いものに限る。)を受けること
  • 債務の弁済、担保の提供又は保証をされること
  • 無償で物品又は不動産の貸付けを受けること
  • 未公開株式を譲り受けること
  • 供応接待を受けること
  • 飲食、遊技若しくはゴルフ、又は旅行をともにすること
殊に、「金銭、物品又は不動産の贈与(せん別、祝儀、香典又は供花その他これらに類するものとしてなされるものを含む。)を受けること」を禁止しており、個人的な謝礼であっても、許されないことを肝に銘ずるべきである。
(3)学生とのその他の関係において
教員の学生に対する教育活動は、単なる職務というだけでなく、人と人との触れ合いであり、また、自ら学び、学問的、人間的成長を促していくという活動でもある。そのため、日常活動において、例えば、学生が帰省後や旅行後に手土産などを好意をもって持参すること等が想定される。こうした場合であっても、疑惑や不信を招くようなことがないように対処すべきである。すなわち、通常一般の社交の程度(1件につき5,000円)を超える物品は受け取ってはならない。また、これらの物品が一方的に送られ、返却ができなかったような場合には、倫理管理者又は倫理管理補助者を通して、学内役員で構成する倫理委員会へ報告し、同委員会が指示する処理をしなければならない。

3.研究活動における倫理に係る行動規範について

教員の日常活動のうち、学生への教育活動と並んで大事な職務の一つとして研究活動があるが、本法人では、「名古屋市立大学における研究倫理に関する指針」(以下「研究倫理指針」という。)において、教員の研究活動における倫理に係る行動規範が定められている。
研究倫理指針では、研究者としての教員の自律性に依拠し、教員がこの指針を遵守することで、本学における学術研究の透明性が保証されるとともに、社会からの信頼と尊敬が得られるものと位置づけて、教員の研究活動に関し遵守すべき基本的な事項を定めている。ここでは、その中でも特に重要なものとして、研究成果の公開と説明、不正行為の禁止、インフォームド・コンセント、個人情報の保護に関するものについて、以下に抜粋する。
  • 教員は、社会に対し研究成果を積極的に公開・説明することにより、広く社会への還元に努めるとともに、自己の研究についての説明責任を果たさなければならない。
  • 教員は、計画の立案から成果の発表にいたるまでのすべての研究過程において、研究及び調査のデータの記録保存や厳正な取扱いを徹底し、次に掲げる不正な行為((1)ねつ造、(2)改ざん、(3)盗用)は絶対に為さず、またこれに加担してはならない。
  • 教員は、個人情報、データ等の提供を受けて研究を行う場合は、個人情報、データ等の提供者に対し、その目的、収集方法等についてわかりやすく説明し、提供者の明確な同意を得なければならない。
  • 教員は、研究のために収集した資料、情報、データ等で個人を特定できるものはこれを他に漏らさないなど、個人情報の保護に充分に留意し、必要な措置を講じなければならない。
  • 教員は、本学の教員としての責務と個人的な利益、あるいは本学における責務と本学以外における責務との衝突、相反に十分に留意し、公共性と中立性を維持しながら、社会との連携活動の推進に努める。
研究者としての教員は、これらの事項の遵守について、自ら厳正に律していかねばならない。次に、研究者としての教員で、特に、金品の授受が問題となったり、倫理が問われたりする場面(各論)として、物品の購入、民間機関等からの研究費の受入れ、公的研究費の適正な運営についてとりあげる。
(1)物品の購入について
教員が、大学や病院で必要な機器等の選定、購入といった契約手続きに当たり、契約の相手先となる又はなろうとしている業者等から、金品の授受があった場合には、賄賂(職務の対価としての不正な利益)と目され、収賄罪が成立することとなる。
また、契約手続きに関与する教員とこのような契約の相手先となる又はなろうとする業者等とは、教員の契約手続きに係る職務との間で利害関係が発生する。倫理規程では、こうした教員の利害関係者との間における、前述の2(2)のところで掲げるような行為を禁止している。
こうした法令上の義務や倫理規程上の義務の遵守はもちろん、公正性、公平性を確保するため、本法人には、公立大学法人名古屋市立大学会計規程及び公立大学法人名古屋市立大学契約規程などにより、契約手続きが定められているので、教員が契約に関与する際は、これらの規程を遵守し、市民、社会から一切の疑念を持たれないようにしなければならない。
(2)研究費の受入れと執行について
本法人が民間機関等から研究費を受け入れる方法としては、民間機関等との共同研究による研究経費の受入れ、受託研究による委託料の受入れ、学術奨励寄付金としての受入れ等がある。これらの研究費の受入れと執行の手続きについては、公立大学法人名古屋市立大学共同研究取扱規程、公立大学法人名古屋市立大学受託研究取扱規程、公立大学法人名古屋市立大学学術奨励寄附金取扱規程にそれぞれ定められているので、研究費の受入れに関与する教員は、これらの規程を遵守しなければならない。
ただ、研究費の受入れについては、研究費の受入れそのものが、教員の他の職務行為(例えば、研究機器や医薬品などの物品の購入)の対価としての不正な利益として提供された又はされるもの、すなわち、賄賂と目される場合には収賄罪が成立する場合もあるので、受入れの決定、承認にあたっては、こうしたことに留意しなければならない。
一方で、民間機関等からの研究費の提供、とりわけ、学術研究の奨励に使用されることを目的とした学術奨励寄附金の提供については、寄附者からの条件がつかないだけに、全くの任意なものでなければならず、研究費の受入れに関与する教員は、民間機関等に対して寄附金の提供を強請する、又は、強請したと疑われるようなことをしてはならない。
また、共同研究や受託研究に関与する教員とこれらの相手先となる又はなろうとする民間機関等とは、教員の共同研究、受託研究に係る職務を介して利害関係が発生する。倫理規程では、こうした利害関係者との間において、物品の購入の場合と同様に、前述の2(2)のところで掲げるような教員の行為を禁止している。このような行為は、共同研究、受託研究に対する見返りであると市民や社会から疑念を抱かせるような行為と目されるためである。
(3)公的研究費の適正な運営及び執行について
民間機関等からの研究費の受入れ及び執行とは別に、科学研究費補助金等の公的研究費の適正な使用を徹底するための対応策として、本法人では、「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(平成19年2月15日文部科学大臣決定)に基づき、科学研究費補助金等の適正な運営及び管理を行う責任者等の設置に関する規程、名古屋市立大学における研究上の不正に関する取扱規程、名古屋市立大学研究不正防止対策委員会に関する規程、公立大学法人名古屋市立大学科学研究費補助金事務取扱要綱などが定められている。公的研究費を使用する教員は、これらの規程を遵守して、適正な運用に努めなければならない。

4.診療活動における倫理に係る行動規範について

医学研究科の教員のうち附属病院で診療に当たる者は、診療料の他に、患者の個人的な謝礼として金品の授受があった場合には、職務の対価としての不正な利益、すなわち、賄賂と目され、収賄罪が成立する恐れがある。収賄罪の成立には、授受した金品の使途は問わないものとされているので、例え、患者から授受した金品を研究目的に使用したとしても、刑事責任を免れるものではない。
それだけに、診療に当たる教員は、診療に対する市民の期待に応えるのは当然の職務であることを認識し、患者の好意と明らかなものであっても、謝礼としての金品は、金銭はもちろん、物品等であっても丁重に断り、受け取ってはならない。
感謝の気持ちとして、どうしても何がしかの謝礼をしたいという患者がいれば、公立大学法人名古屋市立大学振興基金への寄附を紹介し、個人的な授受は避けなければならない。

5.社会貢献活動における倫理に係る行動規範について

名古屋市立大学は、「広く市民と連携し、協働することを通じて地域社会及び国際社会にその成果の還元を図ることにより、社会文化の向上と人類福祉の増進に寄与すること」を設立の目的として掲げており、また、中期目標の前文にある大学の基本的理念の中でも、すべての市民が誇りに思う・愛着の持てる大学となるべく、魅力ある地域社会づくりへの貢献が使命であることを謳っている。いうまでもなく、社会貢献活動は、本学教員の大事な職務の一つである。
教員の社会貢献活動においては、本学での本務となる学生への教育活動、研究活動、大学運営との兼ね合いをどう整理するかが問われることになるが、これに関しては、教員の兼業・兼職について定めたものとして、公立大学法人名古屋市立大学役員及び職員の兼業に関する規程(以下「兼業規程」とする。)がある。
  • 兼業及び兼職をすることにより、本務となる職務の遂行に支障をきたす恐れがないこと
  • 兼業及び兼職による心身の疲労のため、職務の遂行上その能率に悪影響を与える恐れがないこと
  • 申請に係る兼業及び兼職先との間に、物品の購入、業務の委託等の契約関係又は許可、認可等の権限行使その他特別な利害関係がないこと又はその発生の恐れがないこと
  • 兼業及び兼職先の事業又は事務に従事することによって、職務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと
従って、教員が兼業・兼職をする場合には、まず、これらの基本原則を満たすものとして、兼業規程及び公立大学法人名古屋市立大学役員及び職員の兼業に関する規程細則の定めに従って許可を受ける手続をとらなければならない。
そして、許可を受けた教員の兼業・兼職は、教員の職務としての社会貢献活動に位置づけられるものであるので、教員が兼業・兼職に従事する場合には、以下のことに留意しなければならない。
  • 本学の一員であることを自覚し、自らの知識、能力を全力で社会への還元に努めること
  • 兼業先においても、本学教員としての倫理規程等、各種規程を遵守すること
  • 本法人・本学での職務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないようにしなくてはならないこと

おわりに

以上、倫理関係諸規程についての理解を深め、今後の定期的な点検に資するように、倫理規程に従い、倫理原則を示すとともに、教員の日常活動の諸場面における、倫理関係諸規程などで規定する具体的な行動規範についてとりあげてきた。しかしながら、ここでとりあげた行動規範は、教員の日常活動の代表的な場面におけるものであり、教員のすべての場面での行動規範を網羅するものではない。従って、教員倫理綱領、倫理関係規程、そして、本行動指針に示された規範及び精神を大学の日常活動において浸透させ、実行していくことが大切である。