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森田明理教授が記者説明会「光線療法の新展望」を開催—皮膚疾患、免疫制御、在宅医療、海外展開—


講師:森田明理 医学研究科病院経営学 教授(前 加齢・環境皮膚科学 主任教授)
名古屋市立大学(名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1、学長:大原弘隆)は2026年10月6日、記者説明会「光線療法の新展望—皮膚疾患、免疫制御、在宅医療、海外展開」を開催しました。
医学研究科病院経営学(前 加齢・環境皮膚科学)、名古屋市立大学医学部附属西部医療センター 病院長の森田明理教授が講師となり、「光が切り拓く新たな研究開発拠点形成」の概要、光線療法の歴史と治療機器開発の歩み、2026年10月に販売開始する紫外線治療器の最新機種「セラビーム® UV308 Pro」の紹介、紫外線照射による制御性T細胞の制御、在宅光線療法の実現に向けた展望、アジア諸国への医療技術支援と人材育成について講演しました。

森田明理 教授の記者会見の様子

森田明理 教授

■講演概要
テーマ1. 研究活動の全体構想と研究体制「光が切り拓く新たな研究開発拠点形成」

「光が切り拓く新たな研究開発拠点形成」は、名古屋市立大学が強みを持つ「医学・薬学・工学」の学問領域を融合させ、光の波長特性を最大限に生かした難治性疾患治療やがん治療、免疫制御の技術開発を進めています。
AMEDやJSTなどの大型公的資金のサポートも受け、国際的な研究開発拠点の形成を目指しています。次の4つのテーマを研究しています。
①基盤技術開発グループ:波長特性を応用した難治性皮膚疾患の治療技術開発。
②応用グループ:糖・腫瘍ホーミングペプチド連結クロリンe6を用いた次世代光線力学療法(PDT)によるがん免疫効果の検証(大腸がん同種移植モデル等を用いて抗腫瘍効果を検証)。
③探索グループ:紫外線照射による皮膚免疫制御(制御性T細胞の誘導メカニズム)の基礎解析。
④システム構築:光を自在に扱う最先端フォトニック結晶(2D/3Dコロイド結晶など)の技術開発。
光を利⽤して、難治性疾患やがんの治療に新しい技術を導⼊することを目標に、光を使った治療法による免疫制御のメカニズムを解明し、新しい治療アプローチを確⽴することを⽬指しています。

テーマ2. 光線療法の歴史と治療機器開発の歩み

・PUVA療法の歴史
光線療法は紀元前から、エジプトでは「Ammi Majes」、インドでは「Psoralea corylifolia」の果実抽出液を服用または塗布して日光浴をするという白斑治療に始まりました。アミ・マジェスの花の種に含まれるソラーレンという成分(8-MOP)が紫外線を吸収して作用をもたらすことが1940年代に確認されました。1974年にこれを塗ったり飲んだりしてUVAを当てる『PUVA療法』が乾癬に有効であることが見出されました。名古屋市立大学(以下「本学」)は1975年に皮膚科第2代教授の水野信行先生が日本で初めてPUVA療法を導入し、日本の皮膚光線療法をリードしました。
しかし、従来のPUVA療法には発がん性リスクがありました。また、原料のアミ・マジェスは少量しか売れないため供給されなくなり、塗付用・飲用のPUVA薬剤は2030年頃に無くなると言われています。

・光線療法の開発(光源の模索)
本学は私が教授に就任してから、PUVA薬剤に頼らない光線療法の機器開発を進めてきました。

 2002年 311 nm ナローバンドUVB治療器
ソラーレン等の薬剤を使わず、発がん性の低い特定波長(311 nm)のみを照射します。乾癬、白斑、円形脱毛症等に有効性が報告されています。ところが、「311 nm ナローバンドUVB照射装置」の光源には水銀ランプを使用しています。その後、水銀に関する水俣条約の採択などを背景に、世界的に水銀使用製品の削減や水銀フリー化が進み、水銀を使用しない新たな光源の開発が求められるようになりました。

 2008年 『セラビーム® UV308』 308 nm エキシマライト治療器(本学実用化第1号)
励起二量体の発光を利用し、高出力な308 nmの紫外線を照射します。 ターゲット照射が可能となり処置時間を短縮しました。過剰な色素沈着を防ぐ「エキシマフィルター」を開発し搭載したことで、日本国内のみならずアジア圏(タイ、中国等)への展開に成功しました。

 2011年 『TARNAB(ターナブ)』 312 nm フラットタイプナローバンドUVB治療器
希ガス(Xe)と蛍光体を施したガラスによる平面発光技術(312 nm±1 nm)を採用し、重量わずか500 gの円形ハンディ型デザインを実現しました。水銀フリー、高照度・均一照射、小型で、点灯後即座の立ち上がりが特長です。乾癬(かんせん)、尋常性白斑、円形脱毛症、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)などで臨床改善効果が示されています。将来的に実現したい在宅医療に適した機器と言えます。

・LED光線療法の開発
ノーベル物理学賞を受賞された天野浩先生が名古屋大学におられた時に、「LEDを光線療法に使えないか」とおっしゃったのがLED治療器の開発の始まりでした。深紫外線LED(AlGaN系窒化物半導体)の技術進歩もあり、長年、ウシオ電機との共同開発を進めてまいりました。

 2021年 『セラビーム® UVA1』 365 nm UVA1-LED治療器
UVA1の照射は、T細胞のアポトーシス誘導や真皮コラーゲン線維の代謝改善(コラゲナーゼ誘導・コラーゲン産生抑制・TGF-β受容体低下)をもたらし、強皮症やアトピー性皮膚炎、皮膚T細胞リンパ腫などを対象に研究・臨床応用が進められています。しかしながら、従来の海外のUVA1治療器は大電力・大型で国内で普及しませんでした。
私たちは細胞を用いた実験から、コラゲナーゼが最も誘導される波長が365 nmであることを発見し、ウシオ電機との共同開発により、365 nmの紫外線LEDを搭載し、真皮深層まで紫外線を到達させる治療機器『セラビーム® UVA1』を2021年に開発しました。小型・省電力・長寿命・水銀不使用で国産の機器です。
難治性の手湿疹(汗疱状湿疹)や掌蹠膿疱症に対し、数回〜20回程度の照射で亀裂・水疱・痒みの改善が認められた症例が報告されています。

 2022年 『セラビーム® UV308 mini LED』 308 nm UVB-LED治療器
ハンドピース重量370 g、設置面積A4サイズ以下のコンパクト設計。窒化物半導体(AlGaN系)技術を応用し、UVB光源の完全LED化を達成。ウシオ電機との共同開発により、『セラビーム® UV308 mini』と比較して消費電力70%削減、耐用期間6年間の保守メンテナンスフリーを実現しました。

 2026年 最新機器『セラビーム® UV308 Pro』 高出力308nm UVB-LED治療器
治療効果に適した308 nm付近の放射強度を『セラビーム® UV308 mini LED』 の約1.5倍に高め、赤みを抑えながら1回あたりの照射・処置スピードを従来の『セラビーム® UV308 mini』と比較して約1/4)に短縮しました。また、「エキシマフィルター」を搭載することで、紅斑反応(赤み・熱感)の原因となる297 nm以下の不要な短波長をカットしました。 2026年10月からウシオ電機にて販売を開始します。詳細は次に説明します。

テーマ3. 紫外線治療器の最新機種「セラビーム® UV308 Pro」の紹介

・最適波長(308 nm〜312 nm)の同定と波長選別の重要性
T細胞を用いた研究で、治療効果(アポトーシス誘導)と副作用(DNA障害:CPDや6-4PP形成)のバランスを解析した結果、光線療法に最適な波長は308 nm〜312 nm付近にあることを突き止めました。LEDは発光スペクトルの幅が広いため、不要な光も混ざってしまいます。297 nm以下の短波長は、紅斑反応や熱感で皮膚が赤くなりやすく、治療上の寄与が小さいため、297 nm以下の短波長をカットする「エキシマフィルター」を搭載しました。これにより、照射による紅斑反応の低減を図ります。

セラビーム® UV308 Proの写真

セラビーム® UV308 Pro

・308 nmの新たな選択肢
「セラビーム® UV308 Pro」は、その基本コンセプトを継承しながら、LED素子の選定や光学設計、フィルター設計を最適化することで、治療上重要な308nm付近へのエネルギー集中度を向上させました。これにより、平均MED(最小紅斑量)は、「UV308 mini LED」の約300mJ/cm²に対し、「UV308 Pro」では約250mJ/cm²となりました。これは、308nm付近の有効波長へのエネルギー集中度が高まったことによるもので、同じ照射量であれば従来機よりも短時間で照射を行うことが可能となり、診療効率や処置効率の向上が期待できます。

図:『セラビーム®UV308 Pro』と『セラビーム®UV308 mini LED』の放射照度の比較

図:『セラビーム®UV308 Pro』と『セラビーム®UV308 mini LED』の放射照度の比較

・操作性と安全性の追求
高出力化を図りつつ、患者さんには「1回の照射時間を短縮」というメリットを提供し、医療者には「約380 gと軽く局所照射が簡単」という扱いやすさを実現しました。また、購入後6年間は保守メンテナンスフリーでランニングコストを大幅に低減できます。

・臨床効果と再発抑制の可能性
乾癬では、外用薬のみでは改善しにくい病変に対し、10回程度の照射で改善がみられ、治療後半年間程度は皮疹が出てこなくなった症例が報告されています。これは後で説明する制御性T細胞の誘導が関与している可能性があると考えています。さらに、50回程度の照射で色素再生がみられた尋常性白斑の症例や、難治性の円形脱毛症(SALTスコアの大幅改善)、掌蹠膿疱症、手湿疹などに対し、赤みなどの副作用に配慮しながら治療を行うことができ、乾癬、尋常性白斑、円形脱毛症、掌蹠膿疱症、手湿疹などの疾患に対して、改善がみられた症例が報告されています。

テーマ4. 紫外線照射による制御性T細胞の制御

・地表に届かないUVC(260 nm)が制御性T細胞をより誘導する
坂口志文先生がノーベル賞を受賞された「制御性T細胞(Treg)」は、UVB(紫外線B波:280~320 nm)の照射によって誘導されることが分かりました。
さらに解析を進めると、地上には届いていないUVC(紫外線C波:100~280 nm)領域、特に260 nmの光の方が300 nmよりもTreg(CD4+Foxp3+CD25+)をより誘導することを見出しました。Single-cell RNA-seq解析により、誘導されたTregはICOS、CTLA4、Neuropilin-1、Myd88、IL7Rなどの機能的マーカーが高発現していることが判明しています。

・組織修復と「痛みの緩和(PENK)」という新機能
紫外線で皮膚の樹状細胞(Langerin⁻DC等)と細胞間情報伝達により増殖した制御性T細胞(CD81分子が関与)は、免疫を抑制するだけではなく、組織修復能力(アンフィレギュリン:AREG)やプロエンケファリン(PENK)を持っています。PENKなどは痛みの緩和や創傷治癒の促進につながるのではないかと、研究を進めました。上手く光を使えば、皮膚や身体のアレルギー・免疫状態の恒常性を保つことができるのではないかと考えており、皮膚以外の炎症性疾患への応用可能性についても研究を進めています。

テーマ5. 在宅光線療法の実現に向けた展望

治療にかかる医療費や患者さんの負担を考慮すると、薬剤によっては年間で高額な医療費を要するものもあり、飲み薬を何年も飲み続けることは患者さんにとって大変です。光線治療機器なら自宅で照射治療ができるという大きなメリットがあります。

・平面光源デバイス(TARNAB)と遠隔管理システム
水銀フリーの平面光源(312 nm Xe放電)を採用した超軽量(500 g)治療器『TARNAB(ターナブ)』は在宅光線療法に適しています。患者が自宅で自己照射し、スマートフォン等で患部画像を送信して、医師がICカードや通信経由で治療プロトコルを遠隔管理するシステムを考案しています。
私たちは、『TARNAB』をはじめとする在宅光線治療が公的医療保険に適用されるために、厚生労働省の診療報酬改定(保険適用)に向けた申請・折衝を継続しています。まだ在宅光線療法は医療保険で1つも認められたものがありません。既存の治療法の延長ではなく、制度上ゼロから新しい項目を作る必要があります。現在の経済状況もあり、追加することのハードルは高いです。しかしながら、患者さんの負担軽減や医療費削減のために重要であるため、学会の協力を得て診療報酬改定に向けた申請・折衝を続けています。

テーマ6. アジア諸国への医療技術支援と人材育成

タイやフィリピンなどの国では、簡単に高価な注射薬を使えるわけではありません。そこで、安価な光線療法がアジア諸国で見直されています。
名古屋市立大学病院では、タイやフィリピンから若い皮膚科医を3か月間受け入れて研修を行っています。以前はイギリスで研修していたそうですが、今は名古屋市立大学病院に来て研修するようになっています。母国に帰って光線療法クリニックを開設して成功している先生もいます。タイ(IOD)やシンガポール(ナショナル・スキン・センター)でも講義を行い、技術支援を進めています。

まとめ・森田明理教授のコメント

光には、私たちがまだ解明しきれていない生命現象をコントロールする大きな可能性があります。本学の『光が切り拓く新たな研究開発拠点形成』事業では、太陽の光と人が長く付き合ってきた知恵と最先端のLED技術を融合させ、皮膚疾患、難治性疾患、がんに対する新たな治療法の開発を進めてまいりました。
高額な薬剤費や頻繁な通院に悩む患者さんへ、国内だけでなくアジア諸国に、身体的・経済的負担の軽減が期待できる光線療法という選択肢を届けることが私たちの使命です。
患者さんが自宅で安心して治療できる『在宅光線療法』の実現にも継続して取り組み、患者さんのQOL(生活の質)を高める光線療法の革新を、名古屋から世界へ発信してまいります。

記者会見の写真

■講師略歴

森田明理教授

森田明理教授

森田 明理(もりた あきみち)
1989年 名古屋市立大学医学部医学科卒業
1990年 名古屋市立大学大学院医学研究科
     (博士課程・愛知県がんセンター研究所免疫部)
1994年 名古屋市立大学医学部助手
1995-1997年 独デュッセルドルフ大学皮膚科
        (独フンボルト財団奨学研究員)
1997-1998年 米テキサス大学サウスウエスターン
        メディカルセンター皮膚科
1998年 名古屋市立大学医学部講師
2001年 名古屋市立大学医学部助教授
2003年から 名古屋市立大学大学院医学研究科 教授
2015年1月から 名古屋市立大学病院 副院長
2021年4月から 名古屋市立大学 学長補佐、名古屋市立大学病院 病院長代行
2026年4月から 名古屋市立大学大学院医学研究科 病院経営学 教授
         名古屋市立大学医学部附属西部医療センター 病院長
■参照
光が切り拓く新たな研究開発拠点形成  https://ncu-light.jp/

■お問い合わせ
名古屋市立大学 広報課 電話:052-853-8328
            E-mail:ncu_public[at]sec.nagoya-cu.ac.jp