国内電波望遠鏡もブラックホール撮影の最前線へ〜野辺山45m望遠鏡に搭載する新たな受信機開発プロジェクトがスタート!〜
研究の概要
名古屋市立大学大学院理学研究科の秦和弘准教授、公立諏訪東京理科大学の中島拓准教授らを中心とする研究チームは、国立天文台野辺山宇宙電波観測所が運用する45m電波望遠鏡に新たな高性能ミリ波受信機を搭載するプロジェクトを開始しました。野辺山45m電波望遠鏡は世界最高級の性能を持つミリ波帯の望遠鏡であり、宇宙から到来する微弱な電波を調べることでブラックホールの正体、星の誕生、銀河の生い立ちなどを調べています。新たなミリ波帯受信機を搭載し、地球規模の国際観測ネットワークに参加することで、ブラックホールの動画をはじめとする天文学のフロンティアを切り開くとともに、新たなミリ波技術の開発と実用化がより一層進んでいくことが期待されます。
ポイント
・国内最大級の電波望遠鏡に最新鋭のミリ波帯受信機を開発・搭載する計画がスタート
・ブラックホール撮影国際観測ネットワークに、日本の電波望遠鏡も初参加を目指す
・日本からの「新戦力」が加わることで、ブラックホール写真の高画質化・動画撮影が可能に
・ブラックホール撮影国際観測ネットワークに、日本の電波望遠鏡も初参加を目指す
・日本からの「新戦力」が加わることで、ブラックホール写真の高画質化・動画撮影が可能に
背景
野辺山45m電波望遠鏡は、長野県にある国立天文台野辺山宇宙電波観測所が運用する世界最大級のミリ波帯天体望遠鏡です。最先端の天文学研究に広く活用されており、最近では人気アニメ映画の舞台となったことでも知られています。この45m電波望遠鏡をアップグレードする新たな計画として、2026年度より2件の科学研究費補助金(日本学術振興会)が採択され、受信機開発プロジェクトがスタートしました。
・[26K21725] 科研費 基盤研究(S)、次世代国際ミリ波干渉計ネットワークで挑む巨大ブラックホールのジェット駆動と多様性、代表:秦 和弘 名古屋市立大学 准教授
・[26H02067] 科研費 基盤研究(A)、大規模マルチピクセルカメラの実現に向けた超伝導集積回路型ヘテロダイン受信機の開発、代表:中島 拓 公立諏訪東京理科大学 准教授
このうち本学の秦准教授が研究代表者を務める前者のプロジェクトでは、公立諏訪東京理科大学の中島拓准教授のほか、大阪公立大学、国立天文台、JAXA、新潟大学、工学院大学の研究者などと共同で新たに230GHz帯(波長1mm帯)の高性能受信機を開発し、天文学の未解決問題に挑戦します。
・[26K21725] 科研費 基盤研究(S)、次世代国際ミリ波干渉計ネットワークで挑む巨大ブラックホールのジェット駆動と多様性、代表:秦 和弘 名古屋市立大学 准教授
・[26H02067] 科研費 基盤研究(A)、大規模マルチピクセルカメラの実現に向けた超伝導集積回路型ヘテロダイン受信機の開発、代表:中島 拓 公立諏訪東京理科大学 准教授
このうち本学の秦准教授が研究代表者を務める前者のプロジェクトでは、公立諏訪東京理科大学の中島拓准教授のほか、大阪公立大学、国立天文台、JAXA、新潟大学、工学院大学の研究者などと共同で新たに230GHz帯(波長1mm帯)の高性能受信機を開発し、天文学の未解決問題に挑戦します。
新たな230GHz帯受信機で目指すこと
巨大ブラックホールの観測を目的とした受信機です。巨大ブラックホールは、1992年に野辺山45m電波望遠鏡によって銀河の中心部で極めて高速に運動するガス塊が観測された事をきっかけに発見され、2019年には世界中の電波望遠鏡を結合したイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)により写真が初撮影されたことで、大きな話題となりました。EHTは230GHzという極めて波長の短い電波を用いて観測を行っており、日本国内の電波望遠鏡にはこれまでそのような短波長の電波を受信する装置が搭載されていませんでした。今回新たに230GHz帯を観測できる受信機を開発し野辺山45m電波望遠鏡に搭載することで、初めて日本国内からもEHT国際ネットワークに参加し、次世代のブラックホール観測に大きく貢献することが期待されます(図1)。さらに日米を中心に、ミリ波電波望遠鏡を人工衛星軌道に打ち上げ、宇宙空間も利用したブラックホール観測プロジェクトBlack Hole Explorer (BHEX) が現在計画されており、野辺山45m電波望遠鏡が地上局として参加することで、BHEXの性能も格段に向上することが見込まれます。新たに開発する受信機では、大気の揺らぎがもたらす雑音を低減し、地上からの観測性能を極限まで高めるために86GHz帯の電波も同時に観測できるようにします(図2)。

図1. イベント・ホライズン・テレスコープ国際ネットワークへ、新たに野辺山45m電波望遠鏡も参加することで、次世代のブラックホール観測に大きく貢献することが期待されます。

図2. 既存のTZ(ティーゼット)受信機を改造することで、86GHzと230GHzを同時に観測できるようにします。ミリ波周波数分離フィルターと、230GHz帯超伝導受信機を新たに開発します。
開発プロジェクト始動!
始動した開発プロジェクトを確実に推進し成果を得るために、対面でのキックオフミーティングが野辺山宇宙電波観測所で2026年4月10日に開かれました。秦准教授、中島准教授、共同研究グループの小川英夫名誉教授(大阪公立大学)のほか各大学の大学生・大学院生が一堂に会し、最新の開発研究動向を共有し、今後のプロジェクトの進め方を議論しました。また、45m電波望遠鏡の受信機室にも立ち入り、新たに開発する受信機の設置場所などを確認しました。

図3. キックオフミーティングで集まった本リリース発表者(左:秦和弘 名古屋市立大学准教授、中央:西村淳 野辺山宇宙電波観測所長、右:中島拓 公立諏訪東京理科大学准教授)
プロジェクト推進者からのコメント
秦和弘 名古屋市立大学准教授
史上初のブラックホール撮影をはじめとするEHT国際協力において日本は大きな貢献をしてきましたが、これまでEHT観測ネットワークに日本国内の電波望遠鏡は参加していませんでした。ミリ波帯で世界最大級の野辺山45mアンテナがEHTに加わることで、より鮮明なブラックホールの動画やジェット発生の謎に迫ることができます。こうした背景のもと、本プロジェクトを立ち上げました。230GHz帯という極めて短波長における受信機開発やアンテナの運用体制の確立は大変難しい課題であり実現には時間を要しますが、全国の大学・研究機関とも緊密に連携し一丸となって挑戦していきます。新たなステージに入ったブラックホール研究の今後の展開に、ぜひご期待ください。
西村淳 国立天文台野辺山宇宙電波観測所長
新受信機開発プロジェクトがスタートしたことをとても嬉しく思います。45m電波望遠鏡の特徴である「ミリ波で世界最大級」の強みを活かしており、開発される新たな受信機によって45m電波望遠鏡の性能が一段と向上し、世界的にも更に重要性が増します。これらの新受信機によって、これまで未解明だった宇宙の側面を、新たに調べられるようになることに今からワクワクしています。更に、新プロジェクトが大学発でスタートしたことにとても注目しています。大学発プロジェクトでは、多くの学生さんや大学院生さんが開発に携わることになります。世界最先端の科学を実現する最先端の装置開発を通して、多くの若手の方が経験を積み成長できます。この刺激的でとても楽しいプロセスを経験する輪が色々な大学に広がっていくことがとても嬉しいです。
史上初のブラックホール撮影をはじめとするEHT国際協力において日本は大きな貢献をしてきましたが、これまでEHT観測ネットワークに日本国内の電波望遠鏡は参加していませんでした。ミリ波帯で世界最大級の野辺山45mアンテナがEHTに加わることで、より鮮明なブラックホールの動画やジェット発生の謎に迫ることができます。こうした背景のもと、本プロジェクトを立ち上げました。230GHz帯という極めて短波長における受信機開発やアンテナの運用体制の確立は大変難しい課題であり実現には時間を要しますが、全国の大学・研究機関とも緊密に連携し一丸となって挑戦していきます。新たなステージに入ったブラックホール研究の今後の展開に、ぜひご期待ください。
西村淳 国立天文台野辺山宇宙電波観測所長
新受信機開発プロジェクトがスタートしたことをとても嬉しく思います。45m電波望遠鏡の特徴である「ミリ波で世界最大級」の強みを活かしており、開発される新たな受信機によって45m電波望遠鏡の性能が一段と向上し、世界的にも更に重要性が増します。これらの新受信機によって、これまで未解明だった宇宙の側面を、新たに調べられるようになることに今からワクワクしています。更に、新プロジェクトが大学発でスタートしたことにとても注目しています。大学発プロジェクトでは、多くの学生さんや大学院生さんが開発に携わることになります。世界最先端の科学を実現する最先端の装置開発を通して、多くの若手の方が経験を積み成長できます。この刺激的でとても楽しいプロセスを経験する輪が色々な大学に広がっていくことがとても嬉しいです。