営農型太陽光発電における水稲収量と光環境の関係―山形県内3地区・3年間の水田で実証―
本件のポイント

●山形大学農学部と名古屋市立大学の研究グループは、山形県内3地区の実際に営農が行われている水田に設置された営農型太陽光発電を対象に、水稲の光環境・収量・品質・粗収益を3年間にわたり統合的に比較評価しました。
●同程度の遮光率でも、パネル配置の違いによって水稲が受ける光の総量と時間的な揺らぎが異なり、収量低下の程度が変わることを示しました。80%収量維持に必要な相対累積光量は76.5%と推定しました。品質面ではタンパク質含有率の上昇と食味値の低下を確認した一方で、経済面では品質低下に伴う農産物収入減少を売電収入が一定程度下支えしうることを示しました。
●本成果は、水田営農型太陽光発電の設計や制度評価を、従来の「遮光率」中心の見方から、実測された光環境に基づく評価へ発展させるうえで重要な知見です。特に、日射条件が相対的に厳しい東北地方の冷温帯水田地域においても、営農型太陽光発電の導入可能性を具体的に検討できることを示した点に意義があります。
●同程度の遮光率でも、パネル配置の違いによって水稲が受ける光の総量と時間的な揺らぎが異なり、収量低下の程度が変わることを示しました。80%収量維持に必要な相対累積光量は76.5%と推定しました。品質面ではタンパク質含有率の上昇と食味値の低下を確認した一方で、経済面では品質低下に伴う農産物収入減少を売電収入が一定程度下支えしうることを示しました。
●本成果は、水田営農型太陽光発電の設計や制度評価を、従来の「遮光率」中心の見方から、実測された光環境に基づく評価へ発展させるうえで重要な知見です。特に、日射条件が相対的に厳しい東北地方の冷温帯水田地域においても、営農型太陽光発電の導入可能性を具体的に検討できることを示した点に意義があります。
概要
山形大学農学部と名古屋市立大学の共同研究グループは、山形県内3地区(酒田市、東根市、米沢市)の実際に営農が行われている水田に設置された営農型太陽光発電を対象に、2022年から2024年までの3年間にわたり比較調査を行いました。高頻度の光環境計測により、水稲が実際に受ける光の総量と時間的変動を評価し、収量、品質、土地利用効率、粗収益との関係を解析した結果、名目上の遮光率だけでは水稲収量や品質の違いを十分に説明できないことを明らかにしました。
解析の結果、営農型太陽光発電区では3年平均で酒田33.6%、東根20.6%、米沢31.6%の減収がみられ、減収には主に穂数の減少が関わっていました。短期的な光の変動性は、光の総量の減少よりも強く減収に関連していました。全データを統合した回帰分析により、行政上の目安である80%収量の維持には、対照区の76.5%以上の相対累積光量が必要と推定しました。また、品質面ではタンパク質含有率の上昇と食味値の低下を確認しましたが、経済面では品質低下に伴う農産物収入減少を売電収入が一定程度下支えしうることを示しました。
本成果は、Journal of Cleaner Productionに2026年3月に掲載されました。
解析の結果、営農型太陽光発電区では3年平均で酒田33.6%、東根20.6%、米沢31.6%の減収がみられ、減収には主に穂数の減少が関わっていました。短期的な光の変動性は、光の総量の減少よりも強く減収に関連していました。全データを統合した回帰分析により、行政上の目安である80%収量の維持には、対照区の76.5%以上の相対累積光量が必要と推定しました。また、品質面ではタンパク質含有率の上昇と食味値の低下を確認しましたが、経済面では品質低下に伴う農産物収入減少を売電収入が一定程度下支えしうることを示しました。
本成果は、Journal of Cleaner Productionに2026年3月に掲載されました。
背景
再生可能エネルギーの導入拡大と食料生産の維持を両立する方法として、営農型太陽光発電への関心が高まっています。一方、水稲は日本の農業において重要な作物であり、営農型太陽光発電の導入にあたっては、周辺地域の標準収量の80%以上を維持することが制度上求められています。しかし、従来の設計や評価では、太陽光パネルの面積比から求める遮光率が重視される一方で、遮光率は実際に水稲が受ける光を直接表す指標ではありません。また、パネル配置によっては、日中に短い日なたと日陰が繰り返されるなど、光の強さが時間的に大きく変動します。水稲の営農型太陽光発電については、これまで特定の実験水田を対象とした研究が多く、複数の設備構成を、複数年にわたり、実際に営農が行われている複数の水田で比較した現地実証は限られていました。
そこで本研究では、山形県内3地区の水田で3年間比較することで、水田営農型太陽光発電における実際の光環境と収量形成の関係を検証しました。これは、日射条件が相対的に厳しい東北地方の冷温帯水田地域において、営農型太陽光発電の導入可能性を、設備構成の違いを踏まえて検討するための基礎研究として位置づけられます。
そこで本研究では、山形県内3地区の水田で3年間比較することで、水田営農型太陽光発電における実際の光環境と収量形成の関係を検証しました。これは、日射条件が相対的に厳しい東北地方の冷温帯水田地域において、営農型太陽光発電の導入可能性を、設備構成の違いを踏まえて検討するための基礎研究として位置づけられます。
研究手法・研究成果
本研究では、山形県内の3地区の生産現場の水田を対象に、3年間にわたり比較調査を行いました。対象としたのは、酒田市の密な細幅パネル型、東根市の疎な細幅パネル型、米沢市の幅広パネル型の3種類です。各地区で、営農型太陽光発電区と隣接する対照区を設定し、水田上の光環境を30秒間隔で測定しました。加えて、収量構成要素、品質指標、土地利用効率、売電を含む粗収益も解析しました。
その結果、3地区はそれぞれ異なる光環境を示しました。酒田市の圃場では、低照度と高照度が短時間で入れ替わる間欠的な光環境がみられ、東根市の圃場では比較的長い高照度の時間帯が確保され、米沢市の圃場では比較的長い低照度の時間帯が生じました。相対累積光量は東根市の圃場で最も高く、米沢市の圃場が最も低い結果となりました。
収量面では、営農型太陽光発電区の理論収量は、全ての地点・年で対照区より有意に低く、3年平均の減収率は酒田33.6%、東根20.6%、米沢31.6%でした。主な要因は穂数の減少であり、混合効果モデルによる解析では、光の時間的変動の負の影響が、累積光量の正の影響を上回ることを明らかにしました。すなわち、水稲収量を評価するうえでは、単に「どれだけ暗いか」だけでなく、「光がどのように揺らぐか」も重要であることを明らかにしました。
また、全データを統合した回帰分析から、80%収量維持に必要な相対累積光量は76.5%(95%信頼区間 71.6–79.9%)と推定しました。品質面では、2024年の分析で、営農型太陽光発電区においてタンパク質含有率の上昇と食味値の低下が生じることを示しました。さらに、土地利用効率を示すLERは1.35から1.45となり、固定価格買取制度期間中の条件では品質低下による農産物収入減を売電収入が下支えする可能性があることを明らかにしました。
その結果、3地区はそれぞれ異なる光環境を示しました。酒田市の圃場では、低照度と高照度が短時間で入れ替わる間欠的な光環境がみられ、東根市の圃場では比較的長い高照度の時間帯が確保され、米沢市の圃場では比較的長い低照度の時間帯が生じました。相対累積光量は東根市の圃場で最も高く、米沢市の圃場が最も低い結果となりました。
収量面では、営農型太陽光発電区の理論収量は、全ての地点・年で対照区より有意に低く、3年平均の減収率は酒田33.6%、東根20.6%、米沢31.6%でした。主な要因は穂数の減少であり、混合効果モデルによる解析では、光の時間的変動の負の影響が、累積光量の正の影響を上回ることを明らかにしました。すなわち、水稲収量を評価するうえでは、単に「どれだけ暗いか」だけでなく、「光がどのように揺らぐか」も重要であることを明らかにしました。
また、全データを統合した回帰分析から、80%収量維持に必要な相対累積光量は76.5%(95%信頼区間 71.6–79.9%)と推定しました。品質面では、2024年の分析で、営農型太陽光発電区においてタンパク質含有率の上昇と食味値の低下が生じることを示しました。さらに、土地利用効率を示すLERは1.35から1.45となり、固定価格買取制度期間中の条件では品質低下による農産物収入減を売電収入が下支えする可能性があることを明らかにしました。
今後の展望
本研究は、水田の営農型太陽光発電の評価において、従来重視されてきた遮光率だけでは不十分であり、累積光量や光の時間的変動を含めて評価する必要があることを示しました。あわせて、日射条件が相対的に厳しい東北地方の冷温帯水田地域においても、営農型太陽光発電の導入可能性を一律に判断するのではなく、設備構成と光環境の設計次第で成立条件を検討できることを示した点に意義があります。今後、営農型太陽光発電設備の設計や実証、制度評価において、こうした動的光環境を考慮した新たな評価枠組みの導入が期待されます。特に、行政上の80%収量要件の運用や設備設計では、動的光指標や最低限必要な累積光量閾値を考慮することが重要と考えられます。
用語解説
1.営農型太陽光発電:農地の上部空間に太陽光パネルを設置し、農業生産と発電を同時に行う仕組み。
2.相対累積光量:営農型太陽光発電区が、対照区に比べて作期全体でどれだけ光を受けたかを示す割合。
3.LER:Land Equivalent Ratio。農業生産と発電を同じ土地で行ったときの土地利用効率を示す指標。
4.固定価格買取制度:再生可能エネルギーで発電した電気を、一定価格で買い取る制度。
2.相対累積光量:営農型太陽光発電区が、対照区に比べて作期全体でどれだけ光を受けたかを示す割合。
3.LER:Land Equivalent Ratio。農業生産と発電を同じ土地で行ったときの土地利用効率を示す指標。
4.固定価格買取制度:再生可能エネルギーで発電した電気を、一定価格で買い取る制度。
掲載情報
著者:桒原良樹(山形大学)、茄子川恒(山形大学)、辰己賢一(名古屋市立大学)
タイトル:Dynamic light environments, rather than shading ratios, determine rice yield and quality in agrivoltaic systems
掲載雑誌:Journal of Cleaner Production
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jclepro.2026.148082
公開日:2026年3月27日
タイトル:Dynamic light environments, rather than shading ratios, determine rice yield and quality in agrivoltaic systems
掲載雑誌:Journal of Cleaner Production
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jclepro.2026.148082
公開日:2026年3月27日
研究支援
本研究に際して、公益社団法人 日本生命財団(若手研究・奨励研究助成「営農型太陽光発電による農作物および地域住民への影響の定量評価」)、株式会社メカニック、公益社団法人 農業農村工学会(研究グループ)の支援をいただきました。