家族人数が少ない家庭ほど子どもの食物アレルギーが多い傾向―エコチル調査7万人の出生コホート解析―
研究成果の概要
家族人数が少ない家庭ほど、子どもの食物アレルギーの割合が高い傾向があることが明らかになりました(例:2人世帯6.4%、8人世帯3.2%)。エコチル調査愛知ユニットセンター(上島通浩センター⻑、名古屋市⽴⼤学環境労働衛⽣学教授)の大矢幸弘特任教授、野村孝泰研究員らの研究グループが、エコチル調査の約7万人の出生コホートデータを解析し、この傾向を明らかにしました。
鶏卵やピーナッツなどのアレルゲン食品は、家族人数の少ない家庭ほど導入時期が遅い傾向がみられました。これらの食品は乳児期に早期導入することで食物アレルギーの発症リスクが低下することが報告されており、本研究の結果は、家庭環境と乳児期の食行動との関連を示唆しています。
本研究は新たな視点から、近年増加している食物アレルギーの理解や予防に資する知見を提供するものです。
鶏卵やピーナッツなどのアレルゲン食品は、家族人数の少ない家庭ほど導入時期が遅い傾向がみられました。これらの食品は乳児期に早期導入することで食物アレルギーの発症リスクが低下することが報告されており、本研究の結果は、家庭環境と乳児期の食行動との関連を示唆しています。
本研究は新たな視点から、近年増加している食物アレルギーの理解や予防に資する知見を提供するものです。
研究のポイント
1.エコチル調査(注1)で得られた約7万人の出生コホートデータ(注2)を用いて、家族人数と小児食物アレルギー(注3)の関連を解析しました。
2.家族人数が少ない家庭ほど4歳時の食物アレルギーの割合が高い傾向がみられました(2人世帯6.4%、8人世帯3.2%)。
3.鶏卵やピーナッツなどのアレルゲン食品は、家族人数の少ない家庭ほど導入が遅い傾向がみられました。さらに、きょうだいの影響をできるだけ除くため、第1子のみの家庭を対象に解析したところ、祖父母や親族が同居する拡大家族世帯では導入が早い傾向がみられました。
4.これらの食品は早期導入により食物アレルギーの発症リスクが低下することが報告されており、家庭環境と乳児期の食行動との関連が示唆されました。
5.近年増加している食物アレルギーの背景を考える上で、少子化や核家族化などの家庭環境の変化に着目した新たな視点を示す知見です。
2.家族人数が少ない家庭ほど4歳時の食物アレルギーの割合が高い傾向がみられました(2人世帯6.4%、8人世帯3.2%)。
3.鶏卵やピーナッツなどのアレルゲン食品は、家族人数の少ない家庭ほど導入が遅い傾向がみられました。さらに、きょうだいの影響をできるだけ除くため、第1子のみの家庭を対象に解析したところ、祖父母や親族が同居する拡大家族世帯では導入が早い傾向がみられました。
4.これらの食品は早期導入により食物アレルギーの発症リスクが低下することが報告されており、家庭環境と乳児期の食行動との関連が示唆されました。
5.近年増加している食物アレルギーの背景を考える上で、少子化や核家族化などの家庭環境の変化に着目した新たな視点を示す知見です。
背景
食物アレルギーは近年、世界的に増加しているアレルギー疾患の一つです。その原因は十分には解明されていません。これまで、家族人数が多いほどアレルギーが少ない現象は、乳幼児期の感染機会の違いによって説明される「衛生仮説」(注4)で議論されてきました。
一方で近年、乳児期の食事導入の時期や方法が食物アレルギーと関係することが報告されています。鶏卵やピーナッツなどの食品は、乳児期に早期導入することで食物アレルギーのリスクが低下する可能性が示されています。
しかし、家族人数などの家族構造が乳児期の食事導入とどのように関連するかは十分に検討されていません。そこで本研究では、エコチル調査の出生コホートデータを用いて、家族人数と小児食物アレルギーの関連を検討しました。
一方で近年、乳児期の食事導入の時期や方法が食物アレルギーと関係することが報告されています。鶏卵やピーナッツなどの食品は、乳児期に早期導入することで食物アレルギーのリスクが低下する可能性が示されています。
しかし、家族人数などの家族構造が乳児期の食事導入とどのように関連するかは十分に検討されていません。そこで本研究では、エコチル調査の出生コホートデータを用いて、家族人数と小児食物アレルギーの関連を検討しました。
研究の成果
本研究では、エコチル調査に参加した子どものうち、条件を満たした71,315人を対象に解析を行いました。妊娠登録時の同居家族人数(児本人を除く)を家族人数として分類しました。4歳時点の医師診断による食物アレルギーを主要な評価項目としました。また、1歳時点での卵やピーナッツなどの食品の導入時期を家族人数別に比較しました。
その結果、家族人数が少ない家庭ほど、4歳時の食物アレルギーの割合が高い傾向がみられました(図1)。2人世帯では6.4%、8人世帯では3.2%でした。また、鶏卵やピーナッツなどのアレルゲン食品は、家族人数の少ない家庭ほど導入が遅い傾向がみられました(図2)。さらに、きょうだいの影響をできるだけ除いて家庭環境との関連を検討するため、第1子のみの家庭を対象に家族構造別の食品導入時期を検討したところ、祖父母や親族が同居する拡大家族世帯では、核家族世帯と比べて鶏卵やピーナッツの導入が早い傾向がみられました(図3)。これらの結果は、家族人数などの家族構造に関連する家庭環境が、乳児期の食行動と関係している可能性を示しています。
本研究は観察研究であり、因果関係を直接示すものではありません。また、日本の育児文化の影響を受ける可能性があり、他国への一般化には注意が必要です。
その結果、家族人数が少ない家庭ほど、4歳時の食物アレルギーの割合が高い傾向がみられました(図1)。2人世帯では6.4%、8人世帯では3.2%でした。また、鶏卵やピーナッツなどのアレルゲン食品は、家族人数の少ない家庭ほど導入が遅い傾向がみられました(図2)。さらに、きょうだいの影響をできるだけ除いて家庭環境との関連を検討するため、第1子のみの家庭を対象に家族構造別の食品導入時期を検討したところ、祖父母や親族が同居する拡大家族世帯では、核家族世帯と比べて鶏卵やピーナッツの導入が早い傾向がみられました(図3)。これらの結果は、家族人数などの家族構造に関連する家庭環境が、乳児期の食行動と関係している可能性を示しています。
本研究は観察研究であり、因果関係を直接示すものではありません。また、日本の育児文化の影響を受ける可能性があり、他国への一般化には注意が必要です。

図1 家族人数と4歳時アレルギー疾患の有病割合
家族人数(本人を除く)別に、4歳時のアレルギー疾患の有病割合を示しています。食物アレルギーでは、家族人数が少ない家庭ほど有病割合が高い傾向がみられました。一方、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息では明確な関連は確認されませんでした。

図2 家族人数と鶏卵・ピーナッツの導入時期
家族人数(本人を除く)別に、鶏卵およびピーナッツの導入時期を示しています。鶏卵やピーナッツは、家族人数の少ない家庭ほど導入が遅い傾向がみられました。乳児期の早期導入が食物アレルギー予防と関連すると報告されており、本研究では家庭環境と乳児期の食行動の関連が示唆されました。
(導入時期は生後6か月以下、7〜8か月、9〜10か月、11〜12か月、13か月以上で分類しています。空白部分は1歳時点の調査で未摂取であった児を示します。)

図3 家族構造と鶏卵・ピーナッツの導入時期(第1子家庭)
第1子のみの家庭を対象に、家族構造別に鶏卵およびピーナッツの導入時期を示しています。家族構造は、(1)核家族(両親のみ)、(2)祖父母同居世帯、(3)叔父・叔母などを含む拡大家族世帯の3群に分類しました。その結果、拡大家族世帯では、核家族と比べて鶏卵やピーナッツの導入が早い傾向がみられました。これらの結果は、家族構造の違いが乳児期の食事導入時期に関連している可能性を示しています。
(導入時期は生後6か月以下、7〜8か月、9〜10か月、11〜12か月、13か月以上で分類しています。空白部分は1歳時点の調査で未摂取であった児を示します。)
研究の意義と今後の展開
本研究は、家族人数と小児食物アレルギーの関連を大規模出生コホートで示した研究です。少子化や核家族化が進む現代社会では、家庭環境や育児行動が大きく変化しています。こうした変化が乳児期の食事導入と関係している可能性があります。
今後、家族人数などの家族構造と乳児期の食行動との関係をさらに解析することで、少子化社会における食物アレルギー増加の背景の理解が進むことが期待されます。また、乳児期の食事導入に関する知見の蓄積は、食物アレルギー予防に役立つ情報につながると期待されます。
今後、家族人数などの家族構造と乳児期の食行動との関係をさらに解析することで、少子化社会における食物アレルギー増加の背景の理解が進むことが期待されます。また、乳児期の食事導入に関する知見の蓄積は、食物アレルギー予防に役立つ情報につながると期待されます。
補足
(1)家族人数の定義
本研究では、妊娠登録時点で同居している家族人数(本人を除く)を家族人数として定義しました。
(2)乳児期の食事導入について
近年、鶏卵やピーナッツなどの食品は、乳児期に適切な時期に導入することで食物アレルギーの発症リスクが低下する可能性が報告されています。一方で、食事導入の時期や方法は個々の健康状態や医療的判断によって異なるため、実際の食事導入については医療専門職の助言に従うことが重要です。
(3)本研究の位置づけ
本研究は、家族人数や家族構成などの家族構造と乳児期の食行動との関連を、大規模出生コホートデータを用いて検討した研究です。食物アレルギーの原因を直接示すものではありません。
本研究では、妊娠登録時点で同居している家族人数(本人を除く)を家族人数として定義しました。
(2)乳児期の食事導入について
近年、鶏卵やピーナッツなどの食品は、乳児期に適切な時期に導入することで食物アレルギーの発症リスクが低下する可能性が報告されています。一方で、食事導入の時期や方法は個々の健康状態や医療的判断によって異なるため、実際の食事導入については医療専門職の助言に従うことが重要です。
(3)本研究の位置づけ
本研究は、家族人数や家族構成などの家族構造と乳児期の食行動との関連を、大規模出生コホートデータを用いて検討した研究です。食物アレルギーの原因を直接示すものではありません。
用語解説
(注1)エコチル調査(Japan Environment and Children’s Study):胎児期から小児期にかけての環境要因が子どもの健康に与える影響を調べる、日本全国約10万組の親子を対象とした出生コホート研究です。環境省が主体となり、国立環境研究所や全国の大学等が協力して実施しています。
(注2)出生コホート研究:出生時から同じ集団を長期間追跡し、環境要因や生活習慣と健康との関連を調べる研究方法です。
(注3)食物アレルギー:特定の食品を摂取した際に、免疫反応によって皮膚症状や消化器症状、呼吸器症状などが起こる病気です。
(注4)衛生仮説:幼少期に感染症などの微生物に触れる機会が少ない環境では免疫の発達が変化し、アレルギー疾患が増える可能性があるとする仮説です。1989年に英国の疫学者デイビッド・ストラカン(Strachan)が、年上のきょうだいが多いほど花粉症が少ないという観察結果から提唱しました。
(注2)出生コホート研究:出生時から同じ集団を長期間追跡し、環境要因や生活習慣と健康との関連を調べる研究方法です。
(注3)食物アレルギー:特定の食品を摂取した際に、免疫反応によって皮膚症状や消化器症状、呼吸器症状などが起こる病気です。
(注4)衛生仮説:幼少期に感染症などの微生物に触れる機会が少ない環境では免疫の発達が変化し、アレルギー疾患が増える可能性があるとする仮説です。1989年に英国の疫学者デイビッド・ストラカン(Strachan)が、年上のきょうだいが多いほど花粉症が少ないという観察結果から提唱しました。
研究助成
本研究は、環境省が実施する子どもの健康と環境に関する全国調査(Japan Environment and Children’s Study:エコチル調査)のデータを用いて行われました。
論文情報
【論文タイトル】
Family Size and Food Allergy in Early Childhood: The Japan Environment and Children’s Study
【著者】
野村孝泰1*, 谷田寿志2, 井上武1, 加藤沙耶香3, 平岡大樹3, 伊藤由起3, 杉浦真弓4, 齋藤伸治1, 上島通浩3, 大矢幸弘3, Japan Environment and Children’s Study Group5
1.名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・小児医学
2.名古屋市立医学部附属東部医療センター 小児科
3.名古屋市立大学大学院医学研究科 環境労働衛生学
4.名古屋市立大学大学院医学研究科 産科婦人科学
5.エコチル調査運営委員長(研究代表者)、コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンターから構成
(*Corresponding author)
【掲載学術誌】
学術誌名:Allergy
DOI番号:10.1111/all.70303
Family Size and Food Allergy in Early Childhood: The Japan Environment and Children’s Study
【著者】
野村孝泰1*, 谷田寿志2, 井上武1, 加藤沙耶香3, 平岡大樹3, 伊藤由起3, 杉浦真弓4, 齋藤伸治1, 上島通浩3, 大矢幸弘3, Japan Environment and Children’s Study Group5
1.名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・小児医学
2.名古屋市立医学部附属東部医療センター 小児科
3.名古屋市立大学大学院医学研究科 環境労働衛生学
4.名古屋市立大学大学院医学研究科 産科婦人科学
5.エコチル調査運営委員長(研究代表者)、コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンターから構成
(*Corresponding author)
【掲載学術誌】
学術誌名:Allergy
DOI番号:10.1111/all.70303