「頭の中に光と音が入ってくる」錯覚体験が国際会議SIGGRAPH Asia 2025のXR部門で最高賞を受賞
「頭の中に光と音が入ってくる」錯覚体験が国際会議SIGGRAPH Asia 2025のXR部門で最高賞を受賞
独自に考案した錯覚装置が、2025年12月16日–18日に香港で開催されたアジア最大規模のインタラクション技術に関する国際展示のXR部門で受賞
独自に考案した錯覚装置が、2025年12月16日–18日に香港で開催されたアジア最大規模のインタラクション技術に関する国際展示のXR部門で受賞
研究成果の概要
名古屋市立大学大学院芸術工学研究科の小鷹研理准教授、加賀美果歩(博士前期課程)は、独自に考案した、頭の中に音と光を流し込む錯覚システムを国際会議SIGGRAPH Asia 2025において展示発表し、XR部門の最高賞『Best Demo in Show Award』を受賞しました。この成果は、映像メディアを頭の中に直接に投影し、身体の内側から出来事を体感するXR技術の基盤として重要な知見を提供するものとなります。
研究のポイント
・XR技術と心理学を融合し、頭の中に光と音が入り込むように感じられる新しい錯覚体験を実現。
・従来の錯覚体験が身体の外観を対象としてきたのに対し、本成果は想像上の「身体内部」に着目した錯覚設計という新規性。
・採択率20%未満という競争率の高い展示プログラムにおいて、世界10か国以上・135件の応募の中から選出・展示され、XR部門最高賞を受賞。
・視聴覚映像を身体の外に提示するだけでなく、頭の中に投影するという新しい体験設計の方向性を示し、XRにおける内的体験表現の可能性を広げる成果。
・従来の錯覚体験が身体の外観を対象としてきたのに対し、本成果は想像上の「身体内部」に着目した錯覚設計という新規性。
・採択率20%未満という競争率の高い展示プログラムにおいて、世界10か国以上・135件の応募の中から選出・展示され、XR部門最高賞を受賞。
・視聴覚映像を身体の外に提示するだけでなく、頭の中に投影するという新しい体験設計の方向性を示し、XRにおける内的体験表現の可能性を広げる成果。

電球の色を脳内にコピーする頭内錯覚(実際の体験の様子)

電球の色を脳内にコピーする頭内錯覚(模式図)
錯覚の内容
本錯覚体験では、マジックミラーを用いて、参加者自身の頭部鏡像に、左右で独立して発光する半球状の「脳」を重ね合わせて提示します。実験者が電球を振ると色がランダムに変化し、その電球を参加者の頭部の左右いずれかに押し当てると、同じ側の半球にその色がコピーされるように提示されます。同時に、その場所に対応した音が左右から提示されます。
このように、視覚(左右の色の変化)、聴覚(左右に同期した音)、触覚(頭部への接触)の場所とタイミングを一致させることで、電球の光があたかも頭の中に流れこみ、内部の状態が変化したかのように感じられ、音が頭内に定位するかのような錯覚が生まれます。
このように、視覚(左右の色の変化)、聴覚(左右に同期した音)、触覚(頭部への接触)の場所とタイミングを一致させることで、電球の光があたかも頭の中に流れこみ、内部の状態が変化したかのように感じられ、音が頭内に定位するかのような錯覚が生まれます。

SIGGRAPH Asia 2025における実際の体験の様子

SIGGRAPH Asia 2025における実際の体験の映像は二次元コードから確認できます
期待できる効果
・本成果は、想像や思考といった内的体験を、光や音として感覚的に捉えられる形に変換できる可能性を示しています。抽象的で捉えにくいイメージや発想を、体験者自身が「感じ取れる対象」として扱うことで、創作活動や発想支援における新しいインタラクション手法としての応用が期待されます。
・また本錯覚体験は、音楽プレイヤーで再生中に表示されるビジュアル表示のような体験を、実際に「頭の中」で生じさせることが可能です。音に合わせて頭内で光や色が変化しているように感じられる体験は、リラクゼーションや没入感の向上につながる可能性があります。
・さらに、視聴覚刺激を身体の外側に配置する従来のXR表現とは異なり、体験者自身の頭内空間を舞台とすることで、より私的で没入度の高い体験表現が可能となり、XR表現における新しい可能性を示します。
・また本錯覚体験は、音楽プレイヤーで再生中に表示されるビジュアル表示のような体験を、実際に「頭の中」で生じさせることが可能です。音に合わせて頭内で光や色が変化しているように感じられる体験は、リラクゼーションや没入感の向上につながる可能性があります。
・さらに、視聴覚刺激を身体の外側に配置する従来のXR表現とは異なり、体験者自身の頭内空間を舞台とすることで、より私的で没入度の高い体験表現が可能となり、XR表現における新しい可能性を示します。
小鷹研究室の活動
小鷹研究室では、皮膚が極端に伸びる錯覚(スライムハンド錯覚)や、身体の内側に物体を侵入させる錯覚(XRAY錯覚)など、独自の身体錯覚体験を継続的に提案してきました。これらの成果は、錯覚分野の国際コンテスト Best Illusion of the Year Contest において、2019年から2023年まで毎年 Top10に選出され、国内外のメディアでも広く取り上げられ、『からだの錯覚』などの著書を通じて一般にも紹介され、学術研究と社会的関心の双方に広がってきました。
これらの知見をXR技術と融合させた体験型錯覚デモは、2022年にも国際会議SIGGRAPH AsiaのXR部門で最高賞を受賞しており、今回の受賞はその流れに連なるものです。4年の間に同一研究室として2度、XR部門最高賞を受賞している点は、錯覚研究とXR表現を横断する取り組みが継続的に国際的評価を受けていることを示しています。
これらの知見をXR技術と融合させた体験型錯覚デモは、2022年にも国際会議SIGGRAPH AsiaのXR部門で最高賞を受賞しており、今回の受賞はその流れに連なるものです。4年の間に同一研究室として2度、XR部門最高賞を受賞している点は、錯覚研究とXR表現を横断する取り組みが継続的に国際的評価を受けていることを示しています。
関連するコンテンツ(頭内錯覚)
「Bulb-in-Hand Initiation(受賞した頭内錯覚)
https://www.youtube.com/watch?v=0qypbn3fwRs
「Percussive Hemispheres」(頭が打楽器となる錯覚、同会議で展示)
https://www.youtube.com/watch?v=hBrfmBvW7h4
「XRAYHEAD Garden」(頭に手が侵入する錯覚、ACM CHI’25において展示発表)
https://www.youtube.com/watch?v=3L4FZ_fz0p0
https://www.youtube.com/watch?v=0qypbn3fwRs
「Percussive Hemispheres」(頭が打楽器となる錯覚、同会議で展示)
https://www.youtube.com/watch?v=hBrfmBvW7h4
「XRAYHEAD Garden」(頭に手が侵入する錯覚、ACM CHI’25において展示発表)
https://www.youtube.com/watch?v=3L4FZ_fz0p0
関連するコンテンツ(その他)
小鷹研究室asの公式HP(注文の多いからだの錯覚の研究室)
https://lab.kenrikodaka.com/
『からだの錯覚 脳と感覚が作り出す不思議な世界』(小鷹研理著、講談社ブルーバックス)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000376138
https://lab.kenrikodaka.com/
『からだの錯覚 脳と感覚が作り出す不思議な世界』(小鷹研理著、講談社ブルーバックス)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000376138
研究助成
本研究は、科学研究費補助金(基盤C)「骨格的な身体像の変形可塑性の同定、および非骨格な身体像への変形錯覚の拡張的適用」(代表:小鷹研理)の支援を受けて実施されました。
論文情報
【論文タイトル】
Bulb-in-Hand Initiation: An Illusory Altered In-Head Sensation via Colored Hemispheres, Audio Panning, and Head Tapping
【著者】
加賀美果歩(名古屋市立大学大学院芸術工学研究科・博士前期課程2年)
小鷹研理*(名古屋市立大学大学院芸術工学研究科・准教授)
(*Corresponding author)
【掲載媒体】
国際会議名:SIGGRAPH Asia 2025 XR(会議録)
DOI番号:10.1145/3761667.3761963
Bulb-in-Hand Initiation: An Illusory Altered In-Head Sensation via Colored Hemispheres, Audio Panning, and Head Tapping
【著者】
加賀美果歩(名古屋市立大学大学院芸術工学研究科・博士前期課程2年)
小鷹研理*(名古屋市立大学大学院芸術工学研究科・准教授)
(*Corresponding author)
【掲載媒体】
国際会議名:SIGGRAPH Asia 2025 XR(会議録)
DOI番号:10.1145/3761667.3761963