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世界各国で二重抗原曝露仮説を実証 早期食物導入による食物アレルギーの予防~国や地域などによる違いを考慮した個別化アプローチが重要~


研究成果の概要

名古屋市立大学 大学院医学研究科特任教授 大矢幸弘は、国立成育医療研究センター山本貴和子、及び世界の食物アレルギー予防のエキスパートらとともに最新の研究成果をもとに食物アレルギー予防について提案を行いました。

研究のポイント

•「二重抗原曝露理論」の確立
今まで「二重抗原曝露仮説」だったものが多くの臨床試験の結果から、皮膚からの感作を防ぎ、口からの早期摂取で免疫寛容を誘導することが科学的に裏付けられました。
•湿疹(アトピー性皮膚炎)は最大のリスク因子
皮膚バリア障害による経皮感作を防ぐため、湿疹の早期・積極的な治療が不可欠です。
•早期食物導入の効果
卵の早期導入は世界のデータを統合した結果、予防効果を示しました。一方、ピーナッツは有病率の高い欧米では顕著な効果が見られましたが、摂取量や有病率が低い日本では効果が限定的でした。
•文化的適応の重要性
食習慣や家族が日常摂取する食材へのスムーズな移行を支援し、不要な食事制限を避けることが推奨されます。

論文の意義

本総説は、世界各国の臨床試験の結果やガイドラインを統合し、地域差を考慮した「個別化予防戦略」の必要性を強調しています。湿疹管理と早期食物導入を組み合わせることで、食物アレルギーの発症を減らす可能性が示されました。

背景

食物アレルギー(FA)は世界的に増加しており、特に乳幼児に多く見られます。地域によって特徴が異なり、欧米ではピーナッツやナッツ、日本では卵が最も多いことが知られています。最大のリスク因子はアトピー性皮膚炎(湿疹)であり、皮膚バリアの障害による経皮感作が食物アレルギー発症の重要なメカニズムとされています。
2019年に「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」が改訂されましたが、その前後から世界中で多くの研究が行われ、さまざまなエビデンスが蓄積されてきました。こうした最新知見を広く共有するため、世界のエキスパートとともに本総説を執筆しました。
注目されているのが、英国で提唱された「二重抗原曝露仮説」です。この仮説は、皮膚からの感作を防ぎ、口からの早期摂取で免疫寛容を誘導するという考え方で、LEAP試験(ピーナッツ)、PETIT試験(卵)など複数のランダム化比較試験(RCT)で支持され、現在では、仮説から確立した理論となりましたので、本総説で初めて理論となったことを世界に提唱しました。
過去には「アレルゲン回避」が推奨されていましたが、近年は「早期導入」へとパラダイムシフトが進み、国際ガイドラインでも推奨されています。ただし、文化や食習慣により戦略は異なります。欧米ではピーナッツ導入が効果的ですが、日本では卵アレルギーが多いため卵導入が重要です。
さらに、湿疹管理の重要性も強調されています。保湿だけでは不十分で、炎症を抑える治療が必要です。湿疹がコントロールされていない状態で食物導入を行うと、逆にリスクが高まることが報告されています。
本総説は、こうした科学的エビデンスを統合し、「早期食物導入+湿疹管理」を組み合わせた予防戦略を提案するとともに、東西の文化差を考慮した個別化アプローチの必要性を強調しています。

研究内容まとめ

湿疹やアトピー性皮膚炎の既往があるお子さんは、すでに食物アレルギーを発症している可能性があります。アレルギーの原因になりやすい食品の摂取について自己判断で開始せず、必ず医師の指導の下で行ってください。

論文情報

【論文タイトル】
Preventing Food Allergy by Early Food Introduction: East Meets West with the ‘Lack Dual-Allergen Exposure Theory’

【著者】
Kiwako Yamamoto-Hanada, 1
Jennifer J Koplin, 2,3
Marion Groetch, 4
George du Toit, 5,6
*Yukihiro Ohya, 7,8

所属
1 Allergy Center, National Center for Child Health and Development, Tokyo, Japan
2 Child Health Research Centre, University of Queensland, Brisbane, QLD, Australia
3 Centre for Food and Allergy Research, Murdoch Children's Research Institute, Parkville, VIC, Australia
4 Elliot and Roslyn Jaffe Food Allergy Institute, Division of Allergy and Immunology, Kravis Children’s Hospital, Department of Pediatrics, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY
5 Department of Women and Children’s Health (Paediatric Allergy), School of Life Course Sciences, Faculty of Life Sciences and Medicine, King’s College London, London, United Kingdom
6 Children’s Allergy Service, Evelina London Children’s Hospital, Guy’s and St Thomas’ Hospital, London, United Kingdom
7 Department of Occupational and Environmental Health, Graduate School of Medical Sciences, Nagoya City University, Aichi, Japan
8 Division of General Allergy, Bantane Hospital, Fujita Health University, Aichi, Japan
(*Corresponding author)

【掲載学術誌】
学術誌名 The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice
DOI番号:10.1016/j.jaip.2025.10.036