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高齢者成人T細胞白血病・リンパ腫に対する新たな標準治療の確立 鹿児島大学、名古屋市立大学、九州がんセンターをはじめとする国内多機関共同臨床試験


未治療CCR4 陽性高齢者 ATL に対する
モガムリズマブ併用CHOP-14の第Ⅱ相試験

研究のポイント

・同種造血幹細胞移植の適応とならない高齢者アグレッシブ成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)に対する標準治療の確立を目指して実施された、世界初の臨床試験において、主要評価項目を達成しました。
・モガムリズマブ併用CHOP療法(Moga-CHOP-14/21)が高齢者アグレッシブATLに対する標準治療として有用であることが示されました。

背景

・ATLはヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)により引き起こされる極めて予後不良な疾患です。日本は世界的にみてもHTLV-1感染者の多い国であり、中でも鹿児島をはじめとする西南日本は感染者が特に多い地域です。
・若年(65~70歳以下)の患者さんに対しては、同種造血幹細胞移植(以下、同種移植)が治癒を期待できる標準治療として確立しています。しかし、国内ではATL患者の高齢化が進んでおり、同種移植の適応とならない高齢者ATLに対する標準治療の確立は、喫緊の課題とされてきました。
・本研究では同種移植の適応とならない高齢者ATL患者さんを対象に、モガムリズマブ併用CHOP-14療法(Moga-CHOP-14)の有用性を検証する第Ⅱ相試験を、国内21施設で実施しました(Clinical Trial Identifier: jRCTs041180130.)。

研究の成果

1. Moga-CHOP療法(Moga-CHOP-14/21)は、高齢者を対象としたにもかかわらず、過去に若年者を対象に実施されたCHOP-14療法を上回る治療成績が得られました。
2.主な有害事象としては、血球減少、感染、皮疹などが認められました。
3.モガムリズマブ関連皮疹の出現およびCCR4遺伝子変異の存在が、Moga-CHOP療法後の治療効果、すなわち生存期間の延長と有意に関連していることが明らかになりました。

*Tsukasaki K, et al. J Clin Oncol. 2007;25:5458-64.

*Tsukasaki K, et al. J Clin Oncol. 2007;25:5458-64.

研究の意義と今後の展開や社会的意義など

・高齢者ATLに対する標準治療として、Moga-CHOP-14/21の有用性が示されたことは大変インパクトの大きい研究成果と考えています。しかしながら、本研究対象となった患者さんの生存期間中央値は1.6年と満足できるものではなく、さらなる治療成績の向上が必要です。
・治療抵抗例や再発する機序の解明や新規薬剤の併用療法など、高齢者ATL治療における臨床的な課題はまだ数多く存在しています。
・これらの課題に取り組むには、多機関共同臨床研究の立案、遂行が不可欠であり、研究資金の確保はもとより、臨床研究管理センターやデータセンターなど多方面にわたる支援体制が必要です。
・ATL治療戦略に関する多くのエビデンスはこれまで日本から発信されてきました。今後も我が国から世界へ向けた信頼性の高いエビデンスの継続的な創出が強く期待されています。

用語解説

モガムリズマブ:本邦で開発された抗CCR4抗体薬。ATL細胞は、90%以上の患者さんにおいてCCR4を発現している。
CHOP-14:非ホジキンリンパ腫に対する治療法の一つであり、4つの薬剤を14日間隔で投与する。
Moga-CHOP-14/21:モガムリズマブ併用CHOP療法を14日間隔で実施できた患者さんは20人、残り28人は21日間隔で開始(22人)、途中で21日間隔に変更(5人)、もしくは1サイクルで終了(1人)した方を含む。

研究助成

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、鹿児島大学および協和キリン株式会社

論文タイトル

A Phase 2 Trial of CHOP with Anti-CCR4 Antibody Mogamulizumab for Older Patients with Adult T-Cell Leukemia/Lymphoma

著者

吉満誠1, a, 崔日承2, a, 楠本茂3, 4, b, 下川元継5, 宇都宮與6, 末廣陽子2, 日髙智徳7, 野坂生郷8, 佐々木秀法9, 頼晋也10, 田村志宜11, 大渡五月12, 高起良13, 中村大輔1, 徳永雅仁6, 関根雅明7, 坂本祐真14, 稲垣宏14, 石田高司15, 石塚賢治1, b.

所属
1. 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 血液・膠原病内科学分野
2. 独立行政法人国立病院機構 九州がんセンター 血液内科
3. 名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学分野
4. 愛知県がんセンター 血液・細胞療法部
5. 山口大学大学院医学系研究科 医学統計学分野
6. 今村総合病院 血液内科
7. 宮崎大学医学部内科学講座 血液・糖尿病・内分泌内科分野
8. 熊本大学病院 血液内科
9. 福岡大学医学部 腫瘍・血液・感染症内科
10. 近畿大学 医学部 血液・膠原病内科
11. 和歌山県立医科大学医学部血液内科学講座
12. 独立行政法人 国立病院機構 鹿児島医療センター 血液内科
13. 大阪鉄道病院 血液内科
14. 名古屋市立大学大学院医学研究科 臨床病態病理学
15. 名古屋大学大学院医学系研究科 分子細胞免疫学

a: 共同筆頭著者
b: 責任著者

掲載学術誌

学術誌名:Blood
DOI番号:doi: 10.1182/blood.2024027902.