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研究業績

シロイヌナズナにおける長鎖非コードRNAを介した耐塩性メカニズムの解明(湯川教授)


研究分野 生命科学(植物分子生理学)
掲載誌 Plant and Cell Physiology
論文題目 AtR8 ncRNA mediates salt tolerance by regulating AtWRKY53–AtABI3 modules and reactive oxygen species homeostasis in Arabidopsis
著者 Kai Xu, Shengyi Liu, Jiafeng Yu, Rong Yan, Ziguang Liu, Hongli Yuan, Nan Zhang, Nan Zhang, Xingguo Lan, Yasushi Yukawa, Juan Wu
所属機関 東北林業大学(中国), 西北農林科学大学(中国), 東京大学,
中国農業農村部(中国), 名古屋市立大学
学生著者
概要 塩害は植物の細胞に毒性をもたらしたり、体内に「活性酸素」を発生させて細胞を傷つけたりするため、農作物の育ちを著しく悪くします。しかし、植物がどのようにしてこの塩ストレスに耐えているのか、その詳しい仕組みはまだ完全には分かっていません。
 こうした中、植物のストレス対応に深く関わっている分子として、タンパク質を作らないRNAの一種である「長鎖非コードRNA(lncRNA)」が注目されています。モデル植物であるシロイヌナズナの遺伝子を調べたところ、RNAポリメラーゼIIIという酵素によって作られる『AtR8』というlncRNAが、塩ストレスに耐える上で重要な役割を果たしていることが分かりました。
実際に、実験で『AtR8』の機能を失わせたシロイヌナズナを作ってみると、以下のような変化が起きました。
・塩分が多い環境で、種子の発芽や幼苗の根の成長が著しく悪化した。
・細胞を傷つける活性酸素(ROS)のバランスを保つ能力が弱まり、過酸化水素(H2O2)などの酸化ストレスに耐えられなくなった。
 さらに詳しいメカニズムとして、この『AtR8』は以下の2つのルートをコントロールすることで、植物の耐塩性を高めていることが明らかになりました。
・活性酸素(ROS)の量を適切なバランスに保つ。
・植物ホルモン(アブシジン酸)の働きに関わる遺伝子(ABI3)のスイッチを、仲介役のタンパク質(WRKY53)を介して制御する。
 このように、RNAが遺伝子の働きをコントロールする多様な仕組み(メカニズム)を解き明かすことは、植物が厳しい環境にどう適応して進化してきたのかという謎に迫るだけでなく、将来的に塩害に強い農作物の品種を開発する(育種)ためにも非常に重要です。
掲載日 2026年6月2日
DOI 10.1093/pcp/pcag003
備考

AtR8長鎖非コードRNAによる植物の耐塩性メカニズム

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