名古屋市立大学 大学院人間文化研究科・人文社会学部

人間文化研究所

サイエンスカフェ

【6月25日開催報告】サイエンスカフェ 川本徹准教授 時計じかけの保安官―西部劇映画における時間の主題―

[2016年07月25日]
第76回 Human & Social サイエンスカフェ
日時:2016年6月25日(土)15:00~17:00
講師:川本徹准教授(アメリカ文学・文化)
テーマ:「時計じかけの保安官――西部劇映画における時間の主題――」
新しい知見がいくつかあった。先ずランドラッシュ(これは19世紀のアメリカのオクラホマで実際にあった土地の「早い者勝ち」獲得競争)である。かつて『遥かなる大地』(トム・クルーズとニコール・キッドマン主演)でこのランドラッシュをテーマにした映画を観たときは、こんな荒っぽい土地獲得競争が実在したのかと仰天したが、それが「機会均等」と「自由競争」、さらには「時間厳守」と「スピード主義」というアメリカ社会を支える原理を象徴していることには思い至らなかった。言われてみれば「ナルホド」と納得。
次に笑い転げたのがハロルド・ロイド(あのロイド眼鏡で有名な)主演の『要心無用』(サイレント映画)である。それにしても主人公のデパート店員を演じるロイドの軽業師はだしの身体能力には舌を巻いた。デパートの宣伝用の大きな時計との格闘は「時間との闘い」のメタファーになっているとのことであるが理屈抜きに笑えた。
最後にゲーリー・クーパー主演の『真昼の決闘』はどうしても触れずにはいられない。白状すると中学生の頃のボクにとってクーパーは理想の男性像だった。孤立無援の保安官を演じるクーパーの後ろ姿にしびれたのは、「どうかボクを見捨てないでおくれ」(Do not forsake me, oh my darling!)と新婚の花嫁(グレース・ケリー)に切々と訴えるテーマソングのせいでもあった。しかし、この映画が1950年代のアメリカで吹き荒れた「赤狩り」(マッカシー旋風)のメタファーだったと知ったとき、ぼくのセンチメンタリズムなどどこかへ吹き飛んでしまった。
村井忠政(「市民学びの会」会員)