名古屋市立大学 大学院人間文化研究科・人文社会学部

人間文化研究所

サイエンスカフェ

【開催報告2014年6月14日】サイエンスカフェ第66回 吉田一彦教授「日本書紀の呪縛」

[2014年05月16日]
サイエンスカフェ 第66回 6月14日(土)
テーマ:シリーズ「日本」を考える(2) 「日本書紀の呪縛」
講師:吉田一彦教授(日本古代史)

吉田先生の講義は、いつも刺激的な内容でおもしろい。私たち日本人は、『日本書紀』の原文を実際に読んだことがなくても、その内容を知っている。例えば、大化の改新や、聖徳太子の数々の事績に関しては、だれでも小学校の段階で習い、ずっと覚えている。最近の研究水準からいえば、これらはどうも史実ではないようだ。後世の権力者や学者によって、時代に合わせた価値ある歴史のみが抽出され、あるいはあたかも事実としてあったかのように歴史が創作されることがある。こうした歴史教育を受けた私たちは、まんまとその誘導に乗せられてしまっている。
『日本書紀』は、天皇制度の創始と深く関わる書である。天皇は、空間・法・経済を支配した。さらに、もっとも感心したのが時間をも支配したことだ。すなわち天壌無窮の神勅によって、この国には天皇家が無限の過去からずっと君臨してきたのであるから、未来永劫にわたって天皇家が君主になる家系であると規定したのである。過去の知識が現在の認識を生み、未来をつくり出す。未来とは過去の副産物であり、その繰り返しであるべきだという、未来に自由を許さない意図を感じた。
そもそも歴史学は未来を展望する中で、有意味な過去を編集する学問である。だからこそ、過去の知識を相対化し、いまの在り方を考えるために、未来を自由に創造するために、歴史学を学ぶ必要があるという。
今回、内容が難しいにも関わらず、専門家でなくとも容易に理解できるような説明と、立て板に水のよどみない話しぶりに、みな好奇心全開で、たびたび驚き、うなった。このことは、まぎれもない事実である。

柴田憲良(人間文化研究科博士後期課程院生)
吉田先生