名古屋市立大学 大学院人間文化研究科・人文社会学部

人間文化研究所

サイエンスカフェ

【開催報告2014年4月12日】65回 阪井芳貴教授 日琉二つの王朝文化をくらべてみる

[2014年04月03日]
サイエンスカフェ65回 2014年4月12日(土)
テーマ:シリーズ「日本」を考える(1) 「日琉二つの王朝文化をくらべてみる」
講師:阪井芳貴教授 (日本民俗学、沖縄学)

概要:
ヤマトと琉球の文化の類似性と相違点を「王朝」をキーワードに考える。
「王朝」ということばに日本人は特別な憧憬を感じるらしい。。。
現実には、ヤマトには「王」は歴史上存在せず天皇を中心に「朝廷」が政治・文化を形成していたが、それを王朝ということばで表してきた。いっぽう琉球には「王」が居て、独自の王朝文化を形成してきた。
このふたつの「王朝」を比較するということは、従来ほとんど行われてこなかった。が、日本文化を考察する上で、さまざまに研究されてきた文化の影響関係などを云々することから離れ、「王朝」文化という捉え方で観てみると、違ったものが浮かび上がってくるのではないか、というのが今回の試みである。

コラム:
今回のサイエンスカフェは、日本と琉球の王朝がテーマであった。私の中での王朝のイメージは、徳川美術館にあるような源氏物語絵巻なので、桜山駅に着いた途端、目に飛び込んできた満開の桜がこの上なく華やいで見え、うきうきと桜山キャンパス内のカフェに向かった。阪井先生には大学院時代から師事し、数年前に行われた沖縄スタディツアーにも参加させていただいている。その時は単なる観光旅行ではないディープな沖縄を見せていただき、沖縄の見方が変わったものである。今回の講義では、どのような切り口で沖縄を講義されるのかと、興味津々でのぞんだ。
まず、阪井先生は「皆さんのお手元に弐千円札があるのならば、見てください。」と言われた。この弐千円札は西暦2000年と、沖縄サミットが行われた記念の年であったことから発行されたもので、札の両面には、今回のテーマである二つの王朝を表象する図柄が描かれているとのことであった。確かに表面には守礼門、裏面には紫式部と源氏物語絵巻(鈴虫)が確認できる。私は日本の紙幣の中で最も美しい図柄の札だと思うが、二千円という単位で生まれたこともあり、現在ほとんど流通していないことを本当に残念に思う。
閑話休題、日本と琉球の両国に影響を及ぼしているのは、歴史的にみても中国や朝鮮であるので、日本も琉球も王朝文化においても類似点が見られるとのこと。悠久の歴史を思う時、中国の国力や、巧妙な外交術を再認識する。日本も琉球も、中国との関係を大切に築きながら、独自の発展を遂げてきたことを忘れてはならない。今回の講座の時間だけでは足りないほど、日本と琉球の話をするには壮大なテーマだと思ったが、話し足りなかった分は、また次回に機会があるものと期待する。日本を考える講座とはいえ、私には中国を大いに意識する講義となった。
現在の阪井研究室には中国人留学生も多く在籍している。この組織の中では、日中の関係はすこぶる良好で、いい意味での日琉中の三角関係となっている。学問に垣根はないと心から思う。この講座の後で、熱田神宮の中にある楊貴妃伝説ゆかりの泉に立ち寄ってみた。謂れに従って石の上に水をかけると、美しさが得られるというその場所には、若い女性が手を合わせ密やかに祈る姿があった。美を追求することにも、国境はないと思った。

野田雅子(同研究科修了生)
阪井先生