名古屋市立大学 大学院人間文化研究科・人文社会学部

人間文化研究所

マンデーサロン

【7月28日】マンデーサロン開催報告 林浩一郎専任講師 多摩ニュータウン開発の構想と現実

[2014年07月08日]
マンデーサロン 2014年7月28日(月)
講師:林浩一郎 専任講師 (地域社会学)
テーマ:「多摩ニュータウン開発の構想と現実―実験都市の迷走とある生活再建者の苦闘―」

研究者とはどうあるべきかを考えさせられる内容であった。
今回の報告を担当した林浩一郎先生は、多摩ニュータウン開発を事例として、開発の利害関係者に焦点を当てた研究に精力的に取り組んできた経緯がある。彼ら 一人ひとりの人生を紡ぎ、その生きざまを紐解くライフヒストリーという手法を用い、「開発の意味は何か」を解明していくのが、林先生の研究スタイルであ る。
今回は特に、多摩ニュータウン開発によって農地を奪われ、転職を余儀なくされた人物に焦点を当てた報告であった。近年ではニュータウンの高齢化が進む一 方、民間事業者が団地のリノベーションに乗り出し、ここに若年世帯が入居する動向が新聞等で伝えられる。しかし、半世紀前にさかのぼると、ニュータウン開 発によって先祖代々の土地を召上げられながらも、多摩地域の発展のために開発を受け入れ、翻弄された人々が確かに存在したのである。彼らの犠牲のもとに開 発が進み、現在の多摩ニュータウンが存在する歴史を看過してはならない。
丹念な資料分析に基づき、また度重なるインタビューに裏付けられた林先生の報告は、開発に人生を左右された人物の軌跡を克明に描き出し、圧巻であった。私 事にわたるが、執筆者は大学院時代の恩師から学術研究における「人間味のある視座」の重要性について、日ごろから指導を受けてきた。今回の林先生の報告を 通じ、一研究者としてあらためてこの点を痛感したしだいである。

三浦哲司(本学准教授)

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