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卒業生の声

広く、浅く、面白そうなことは 何でも挑戦するプロになる。

キャンパスには楽しいことが多すぎる。

横田理恵子さん

学校の進路指導で、先生は生徒に「あなたのしたいことは何?」と質問をする。生徒は、自分が何をしたいのかあれこれと考え、何かを選択し、その繰り返しの中で進路を絞り込んでいく。だが、もし「あれ」も「これ」もしたくて、どれも選択できなかった子はどうすればいいのか。この問題に対して自ら答えを探し、実践してきたのが株式会社マクロミルの横田理恵子さんだ。

横田さんは1998年に芸術工学部に入学した。小さな頃から好きだったITに加え、建築やグラフィックスまで幅広く学べることがとても嬉しかった。また彼女は同学部の3期生のため、入学した頃には先輩が2学年しかおらず、みんなでキャンパスをつくっていこうという気風があふれていた。横田さんは、そんな環境で学べることが楽しくて仕方なかった。

「大学時代のかなりの時間を、製図室にあった自分のデスクで過ごしました」。

しかし将来、自分は何をしたいかを考えた時、明確に答えられない自分に気づいた。なぜなら、あれもこれも面白すぎて、自分のしたいことを簡単に絞ることができないのだ。

そして彼女は発想を変えた。

「何がしたいか分からないけど、広く、浅く、面白そうなことは何でも挑戦しよう」。

子どもたちとレンガのドーム

芸術だけでもない、工学だけでもない芸術工学部だからこそ、選択肢は無限にある。学園祭の実行委員になり、自治会に参加した。さまざまな先生の研究室にも顔を出した。

「鈴木賢一先生(現・芸術工学研究科長)のワークショップを手伝って、子どもたちと一緒にレンガのドームを造ったこともありました」。

アルバイトで雑誌のDTPと取材・原稿書きも体験した。就職活動が始まってからは毎週のように高速バスで東京へ行き、東京でしか開かれない展示を見て回った。全国の芸術系大学の卒業作品を集め、一堂に展示するという一大イベント「てつそん(tetsuson)」にも参加し、全国の美大や芸大の学生と幕張メッセで卒業制作展を開催した。そんな毎日を送るうちに、あっという間に彼女の4年間が過ぎた。

面白そうな方に行きたくなる。

大学院に進むことも考えたが、就職活動が「意外と面白かった」し、何より「東京で一旗あげたかった」ため、彼女は東京の大手出版社に就職した。配属されたのは、その会社で最も売れていたIT系雑誌の編集部。上司は、その会社で最も厳しかった編集長。

「新人の私にも、次々と大きな仕事を任せていただきました」。

横田理恵子さん

編集の仕事は面白かった。しかしある日、マーケティング関連のベンチャー企業の社長と知り合い、新しい事業を手伝ってほしいと誘われた。転職する気などまったくなかった彼女だが、マーケティングによって、商品が生まれる上流工程に触れられるというのは、自分の興味に近い仕事内容だと気付いたという。なにより「この人の元で仕事をしたら絶対に面白い」という直観が働いた。芸術工学部時代から「目の前に面白そうなことがあると、そっちに行かなくては気がすまない」彼女は、まよわずブランドデータバンク株式会社(当時はイーピーエンジン株式会社)への転職を決めた。

新会社で彼女の仕事量はさらに増えた。なにしろ社員は彼女しかいない。ウェブでリサーチをした結果をデータベースにまとめ、必要とする企業に販売するのも彼女が行った。営業なんてしたことがないが、手探りでやってみたら面白かった。他にも総務や人事、秘書まで、さまざまな業務を体験させてもらった。2009年には東証一部上場の株式会社マクロミルのグループ会社となり、彼女もマクロミル社に転籍してマネージャーとして同社の広報業務などを担当した。そして現在、110万人ものモニタの管理・サポートで相変わらず忙しい日々を送っている。

マルチタレントになりたい。

横田理恵子さん

大手出版社からベンチャー企業、一部上場のリサーチ会社という多彩な企業の第一線を走り続けるうちに、彼女は分かったことがあるという。

「私のドメイン(強みを発揮できる活動領域)は、『IT×マーケティング』と『メディア×デザイン』という分野なんです」。

そして今後の夢は、その分野で“マルチタレント”になることだという。

「マーケティングのことなら横田さんに聞こうと言ってもらえる、『ご意見番』になりたいんです」。

横田理恵子さん

そのために、今はさまざまな人の話を聞き、あらゆるメディアにアンテナを張り巡らせ、そこから得た情報を取捨選択しながら常に発信している。その結果として、いずれは会社の肩書きではなく、自分の名前で仕事ができる人になる。それが、芸術工学部時代から広く、浅く、面白そうなことは何でも挑戦してきた彼女がたどり着いた、「あなたのしたいことは何?」に対する答えなのだ。

もちろん、それは現時点の答えであり、これからも変わり続ける可能性はある。

近頃、彼女は芸術工学部出身者のニュースをよく耳にする。ブランドデータバンクを立ち上げた元・上司に、大学時代の後輩を紹介したところ、二人で新しい事業を始めることになった。みんな自分でテーマを見つけ、次々と面白いことを形にし続けている。そんなニュースを聞くたび、とても芸術工学部らしいキャリアの描き方だと納得すると同時に、彼女も負けてはいられないと思う。

「最近、自分の世界を広げるため、朝の時間を使って勉強会や交流会を行う『朝活』に参加しています。そこで多くの人に出会い、いろんな刺激を受けるようになりました。中には、この人と組めば、もっと面白くなりそうだと思える人がたくさんいらっしゃいます」。

ここから、また彼女のキャリアの新しいページが始まるのかもしれない。

プロフィール

横田理恵子さん
株式会社マクロミル 事業企画部 モニタグループ マネジャー
[略歴]
2002年 名古屋市立大学 芸術工学部 視覚情報デザイン学科(現・情報環境デザイン学科) 卒業
     ソフトバンクパブリッシング株式会社 入社(現・ソフトバンククリエイティブ株式会社)
2004年 イーピーエンジン株式会社 入社(後のブランドデータバンク株式会社)
2010年 株式会社マクロミル 入社(ブランドデータバンク社の子会社化に伴い転籍・出向)

とにかく芸術工学部が大好きだった横田さんだが、後になって一つ残念に思っていることがある。「芸術工学棟のロビーにはたくさんの椅子が並んでいるのですが、そのどれもが、美術館にロープをめぐらして展示してあってもおかしくない、世界的に有名なデザイナーの作品。学生時代はそのありがたさを知らずに、よく座っておしゃべりをしていました。もっとしっかり見ておけば良かったと思っています」。今もその椅子は芸術工学部棟のロビーに整列し、本物の持つ素晴らしさを学生に静かに伝え続けている。

横田理恵子さんの在学中の思い出の写真

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