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卒業生の声

大学の“縁”がつながって 先生の大切な”資産”になる。

突然、経済学の面白さを知る

児島完二さん

1980年代後半。日本国中がバブル景気に浮き足立ち、大学生が就職先を選べた、いわゆる「超売り手市場」だった時代。そんな時代に本学の経済学部の学生だった児島完二さんも、周囲の大学生と同様に学生生活を謳歌していた。しかしある日、彼はふと我に返った。

「このままの無目的な生活でいいのか?」と。

必修科目だった辻正次教授(現・兵庫県立大学院教授)の「経済原論」の講義に出席した児島さんは、経済の授業が実は面白いということに初めて気づいた。

「経済政策を数式で解明するという内容で、こんな見方があるのかと驚きました」。

経済学は、一つ分かると他のことも関連して理解できるようになる。次に芝原拓自教授(後に大阪大学から岐阜聖徳学園大学教授)の「日本経済史」の講義に出て、経済学が面白いという発見は確信に変わった。

児島完二さん

「経済学の分野では日本を代表する研究者が名市大に大勢おられることを、それまで私は知りませんでした」。

遅まきながら経済学に魅了された彼は、名だたる有名企業からの誘いに目もくれず、大学院の経済研究科に進む。そこで彼は、後に人生の師となる人に師事する。妙見孟教授(後に聖徳学園女子短期大学学長などを経て、1992年に本学名誉教授になる。2009年には瑞宝中綬章を授賞)である。

研究者として実績を作る

「妙見先生は経済政策研究に工学の最適制御理論を応用したパイオニアです。統計学・計量経済学・オペレーションズ・リサーチ(OR)などの分野にも大きな業績を残されています」。

児島さんの目に映った妙見先生は、まさに研究の鬼であった。一年のうち、休日は元旦のみ。毎日、研究室で研究に打ち込む。

児島さんたち研究室のメンバーは先生から厳しく指導されたという。

ウィーンOR学会で先輩方と(児島さんは一番左)

“研究は自分を裏切らないんだ”

今も仕事で行き詰まるたびに、先生の言葉がいくつも浮かび、もっと頑張らねばという気になるという。妙見先生の言葉の一つひとつが今、児島さんの人生訓になっている。

先生はただ厳しいだけではなく、いつも研究室のメンバーを温かく指導してくれた。大学院前期課程の2年生の時、児島さんは先生からウイーンのOR学会で発表するよう指示された。当時の児島さんには実績もなければ、世界の学会で発表した経験もない。戸惑っていると、先生は言った。

“実績がないからこそ、こういう機会に一つでも多くの実績を作っておくことが大切なんだ”

これが児島さんのデビューとなった。

eラーニングとの出会い

大学院5年間、妙見先生の指導のもと、児島さんはゲーム理論はじめ経済学に関する論文を何本か発表した。業績が評価され、彼は1994年に経済学・統計学の専任講師として名古屋学院大に着任した。ここで講義の難しさや大変さに気付く。数式を使わずに統計学の講義をしようと考えた彼は、当時ようやく一般的になり始めたインターネットを使うことに挑戦した。

児島完二さん

「ホームページに教材を載せ、学生がネットでアクセスして勉強するというシステムを独学で作ってみました」。

まだeラーニングという言葉に馴染みがない時代だ。その後も進化するICTツールを授業に取り入れることにより、児島さんの研究テーマは少しずつICTを利用した教育システムとその効果的な運用法へとシフトしていった。

そして2010年、児島さんは1年間のアメリカ研修で、最先端のeラーニングの研究現場を自ら体験してきた。

「アメリカは、けた外れでした」。

なにしろ、莫大な資金をeラーニングに注ぎ込み、最前線の兵士たちに軍事訓練をするという国だ。日本とは教育の背景や環境がまるで違う。その現場を実際に見て、児島さんのeラーニングに対する認識がずいぶん変わったという。この経験をバネに、今後も彼は、日本ならではのeラーニングのあり方を模索し続けていく。

名市大で生まれた資産

児島完二さん

彼が名古屋学院大学に来て、もうすぐ20年になる。そして今も、彼と本学との関係は続いている。たとえば、2012年に名古屋学院大の学生約1000名が参加した「株式投資コンテスト」。これは参加者が企業の株式にバーチャルで投資し、仮想の利益額を競うコンテスト。学生と地元企業、そして証券取引所にとってメリットのある三方よしのイベントだった。このイベントを企画したのが、名古屋証券取引所に勤務する本学OBだった。

「彼は私が名市大にいた頃の後輩で、こんなイベントを企画しているんですが、ぜひ先輩の大学の学生さんに参加してほしいんです、と話を持ってきました。名市大の後輩なのでぜひ力になりたいと思い、大学として参加できるように幹部を説得しました」。

経済学には、ヒューマンキャピタルという考え方がある。人がキャリア形成過程でその人の中に資本・資産が蓄積されるという考え方だ。あの時、経済学の面白さに目覚めてから、名市大で築いてきた実績や人間関係といったヒューマンキャピタルは、今後もますます大きな“利益”を生み出している。

プロフィール

児島完二さん
名古屋学院大学 経済学部 教授
[略歴]
1989年 名古屋市立大学 経済学部 卒業
1994年 名古屋市立大学 大学院経済学研究科 博士後期課程 満期退学

名市大でたくさんの優れた先生と出会い、影響を受けたことは今でも先生の財産になっている。特に大学院は「寺子屋方式」で、一人の先生が受け持つ学生の数がとても少なかったため、密接なコミュニケーションを通して学問だけでなく“生き方”も学ぶことができた。今、彼のゼミには多くの学生が学んでいる。しかし、そこはさすがにeラーニングを専門とする児島さん。「今はITがありますから、ネットを上手に活用し、学生とは密接にコンタクトをとっています」と語る。

URL: コジマガ http://www.kojima-seminar.net/

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